クルイン（Dipterocarpus　Crinitus)材成分の樹齢による変化（英文）

島田謹爾，Mohd.NOR bin Mohd.Yusoff,KHOO Kean Choon,LEE Tack Wan

　　　摘要

　熱帯材の化学的特性を明らかにするため，同一環境下で生育した樹種の 異なるクルイン材（Dipterocarpus crinitus, 10, 30および50年生）を供試料とし抽出 成分およびリグニンの化学特性を調べた。
　 n−ヘキサン，エチルエーテル，アセトンおよびメタノールによる逐次抽出物の合計は樹 齢とともに増大した。n−へキサン抽出物の主成分は，Hydroxydammarenone-II，Ocotillon e−I，Ocotillone−II，DammarendiolおよびOcotillol−IでOcotillol−I+II/Hydroxydammareno ne-IIの比が樹齢とともに増加していることが特徴的に認められた。
　クラソンリグニン含量は10年生の25.8％から，50年生の28.9％（辺材），30.7％（心材）と樹 齢とともに増加し，それぞれ心材の方が高リグニン量を示した。アルカリ可溶性リグニン量 は樹齢とともに2.8％から4.2％（辺材）および6.1％（心材）に増加し，樹齢により増加するリ グニン量はアルカリ可溶性リグニンの増加に由来していることが明らかにされた。各試料の 木粉，ジオキサンリグニンのニトロベンゼン酸化分解物より得られるSringaldehyde(S)とVan illin(V) の比(S/V)を分析 した結果，10年生の1.66から50年生の0.96（木粉）に減少し，樹齢 の若い材の方が高い値を示し，リグニン中のシリンギル核の形成能が樹齢とともに低下す る可能性が示唆された。

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