!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"> 352-1 森林バイオマスの熱化学的研究

森林バイオマスの熱化学的研究

阿部房子

   要旨

 1973年の第1次石油ショックを契機として全世界的に代替エネルギーの研究が 活発に行われるようになり,自然エネルギーの開発はきわめて緊急で,重要な課題となった。自然エネルギー源と しては,大陽熱,風力,波力,地熱,バイオマスなどを挙げることができる。中でも,森林バイオマスは地球上に 大量に賦存し,資源小国であるわが国にとってもきわめて魅力ある資源である。これらの森林バイオマスのエネル ギー化技術に対する研究開発は重要であるにもかかわらず,エネルギ一利用に関する基礎データの集積はきわめて 少なく,効率的活用をおくらせている。そこで基礎的データの集積,およびエネルギー化技術確立を目的とした本 研究を行い,下記のような結果を得た。
 T.では,わが国のおかれている厳しいエネルギー事情に言及し恒常的にエネルギー資源を得るための方策とし て,各国が取り組んでいるエネルギー造林の実状の一端を紹介した。
 U.では,約40種の早生樹およびその他の広葉樹を試料として最も基本的事項である比重を実験室的および野外 における実用的計測により測定,両者を比較した。その結果,通直な製炭用試験材では野外における計測のみで満 足すべき比重値がえられることを認めた。比重測定を行った試料と同一試料について樹皮率,材・樹皮別発熱量 (単位重量当たりならびに単位容積当たり)を求めた。また樹皮の元素分析値と発熱量測定値との関係を検討し, 固体燃料に使われる元素分析値から発熱量を推定する計算式を補正し,その適合性を高めることができた。
 V.では,木材およびその構成成分の示差熱分析,熱重量分析,熱膨脹分析などの手法を通じて得た本質系バイ オマスの熱分解機構の基礎的知見をもとに,フィールドにおける実用的製炭試験の炭化過程を考察し,実際の炭化 においても主要成分であるセルロースの熱分解が木材全体に及ぼす影響は大であり,セルロースの熱分解吸熱とそ れに続く分解生成物の燃焼発熱とが互いにオーバーラップしながら一定温度で熱分解・炭化が進行することがわか った。
 W.では,木炭硬度,精練度,容積重,気孔率から木炭破砕の難易を推定できるが真比重との相関関係は有意で ないとの結果を得た。金属の還元性の評価に利用されるCO2に対する還元力を木炭とガス用コ ークスで比較し,木炭の反応性がきわめて高いことを認めた。また,活性炭の有機溶媒に対する吸着熱の簡単な検 出により,色素吸着力や当該溶媒に対する吸着能を予測できることを見いだし,新しい活性炭の評価方法に対する 基礎データを得た。
 X.では,最近樹皮などの高圧密化により生産されるようになった木質ペレット燃料の理化学性,燃焼性の基本 的分析を行った。また自動供給装置付きの家庭・事業所むけペレット専焼ストーブで暖房試験を行い,木質ペレッ ト燃料は,きわめて扱いやすく,十分な暖房効果もあり,屋内暖房用に好適であることが分かった。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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