熱帯産広葉樹材の放射乳管およびタンニン管の構造

藤井智之

   要旨

 放射乳管とタンニン管は本材の識別拠点の一つである。それを含む放射組織の構造 および細胞壁構造を主要な樹種について調べ,比較検討した。観察方法は,薄切片法による普通光学顕微鏡法および偏光 顕微鏡法,超薄切片法による透過電子顕微鏡法,および走査電子顕微鏡法である。
 放射乳管とタンニン管の大きさには,絶対寸法も放射柔細胞との相対的大きさにも樹種間で大きな差があった。また, これらを含む放射組織の板日断面形は,水平樹脂道を含む放射柔組織に類似のものから普通の放射柔組織とあまり変わら ないものまで樹種によって異なり,その変異はほぼ連続していた。放射乳管にもタンニン管にも末端壁が認められず,壁 孔様の細胞壁構造も認められなかった。 その細胞壁は放射柔細胞壁よりも薄く,板目断面で弱い複屈折性を示し,ミクロフィブリル配列は多少良いといえる。し かし,細胞壁は未木化で,ミクロフィブリル密度が低く,緩い構造をもつ一次壁的性質のものであり,樹種問で構造の差 はほとんど認められなかった。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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