アカマツ自然受粉家系の仮道管長の変動と遺伝子率の推定

須川豊伸

   要旨

 東北および関西産アカマツ天然生母樹から種子を採取し,設定した岩手試験地からの 39家系,532個体から試料を得て仮道管長を測定した。仮道管長は,試料が若齢であったため,髄から外側へむかって急激 に増加しており,安定した値には達していなかった。測定結果からみると,母樹の場合には,東北で1277〜2953μm,関西 で1498〜3424μm(いずれも第1年輪と第10年輪)であったが,家系では,東北で1405〜3328μm,関西では1423〜3249μmと なり,両者の差は少なくなった。母樹と家系の仮道管長の変動係数の髄から外側へむかう変動をみると,前者では第4〜6年 輪に最大値をもつような変動をするが,後者では第1年輪に最大値があり,髄から外側へむかって減少している。一方,家 系内における変動係数は第1年輪で低く,後,第3〜5年輪で最大となり,外側へむかって低下するようになる。母樹と家系 の値の間で親子相関を求めると,年輪番号が大きいほど,相関係数が高くなるが,関西では有意で,東北では有意でなかっ た。遺伝率の推定は親子相関と家系の分散成分を用いる2方法で行った。前者によると,関西産では25.2〜50.0%,東北産 では9.6〜27.4%であった。また,後者によると,遺伝率は関西産20.9〜62.1%,東北産で0〜30.7%であった。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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