アカマツ自然受粉家系の年輪構造および収縮性能の変動と遺伝率の推定

太田貞明

   要旨

 アカマツの材質育種実行上,必要となる形質を把握するために,年輪構造に関する形質,収縮性能を示す 形質をとりあげ,各形質の出現分布,家系内および家系間の変動,形質相互間の関係,経年変化,遺伝率などについて検討した。
 この試験の結果,年輪構造に関しては,1)材質育種のために有効な形質は,年輪幅よりも最大密度,最小密度,早材密度,晩材密度などで ある。2)産地間で差異が認められる形質は,最大密度,晩材密度,晩材率である(1%水準)。また,年輪幅には5%水準で有意な産地間差異 が認められる。しかし、平均密度,最小密度,早材密度には産地間で差異がない。3)分散分析から求めた遺伝率は,年輪構造については,東 北産,関西産ともに遺伝率を示す形質は,晩材密度と最大密度だけである。4)回帰係数から求めた遺伝率は,東北産(17家系)では早材密度, 平均密度,最大密度,最低密度,晩材率など,また関西産(12家系)では,晩材密度,最大密度などに認められる。5)検定方法で遺伝率を示 す形質,値が異なることについては今後さらに検討すべきである。
 収縮性能については,1)母樹と子供家系との相関は,接線方向収縮率では東北産よりも関西産の方が相関が高い。半径方向収縮率は東北産の ブロックT(1%水準)に,関西産は両ブロックとも有意な相関が認められる。収縮異方性(T/R)については東北産では両ブロックとも1%レベル で有意な相関が認められる。2)親子回帰から求めた遺伝率は,両ブロックともに関西産の方が高い遺伝率を示し,その値は収縮異方性(T/R), 接線方向収縮率,半径方向収縮率の順に低くなる。

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−林業試験場研究報告−(現森林総合研究所)
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