ヒノキ漏脂病に関する病原学的ならびに病理学的研究 T

病原菌の探索・分類と病原性

小林享夫,林 弘子,窪野高徳,田端雅進,伊藤進一郎

   要旨

 大正年代から知られた著名な病害ヒノキ漏脂病はその病因が不明のままであったが,近年ヒノキ若齢林の増加に伴って 再び被害が問題化した。本研究は漏脂病の病因の病原学的解明を志したものである。多くの被害林の病患部からの分離と患部上の菌体検索で検出された主要 菌,Cryptosporiopsis,Pezicula,Sarea,Pestalotiopsisの人工接種を反復した結果,CryptosporiopsisPezicula菌が漏脂病病斑 を再現した。また,前者が後者の不完全世代で同一菌であることが明らかになり,これが漏脂病の病原菌であるとの結論が得られた。本菌は形態的検討の結 果,Pezicula livide(BERK. et BR.)REHM(=Cryptosporiopsis abietina PETRAK)と同定された。本病は本州及び九州に広く分布する。被 害率50%を超える被害林分が調査林の20%余を占め,病患部は樹幹下半部に集中するため著しい材質劣化を起こす。

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−森林総合研究所研究報告−
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