広葉樹キシランの酵素糖化における4-0-メチル-D-グルクロン酸側鎖遊離酵素

石原光朗,稲垣祥子,林 徳子,志水一允

   要旨

 広葉樹キシランから4-O-メチル-D-グルクロン酸を遊離する酵素α‐(1→2)‐グルクロニダーゼを 生産する微生物を探索し,その酵素の生産条件を検討するとともに,その酵素を分離精製し,その機能を調 べた。酵素の基質としてはアルドビオウロン酸を還元した2-O(4-O-メチル-α-D-グルコピラノシル ウロン酸)-D-キシリトールを用いた。
 9種のTrichoderma及び6種の担子菌が産出する菌体外酵素中のα-グルクロニダーゼ活性を調べた 結果,いずれも本酵素を生産することが認められた。それらの中でオオウズラタケ(Tyromyces Palustris)はα‐グルクロニダーゼの最もすぐれた生産菌であった。適当な培養条件下でオオウズラ タケは高活性のα-グルクロニダーゼを生産したが,この酵素は冷凍保存下でも不安定であった。
 つぎに,T.virideが産出するα-グルクロニダーゼを市販酵素であるメイセラーゼ(Meicelase CEPB-10,明治製菓)から分離精製した。イオン交換クロマトグラフィー及びゲルクロマトグラフィーにより約0.5gの 市販酵素から4.2mgの精製α-グルクロニダーゼを得ることができた。精製酵素はSDSポリアクリルアミドゲル 電気泳動で単一のバンドであり,分子量は10万と推定された。精製酵素の作用至適pHは5.0にあり,また,至 適温度は45℃であった。メイセラーゼからさらにキシラナーゼ,β-キシロシダーゼをそれぞれ分離精製し, 広葉樹キシランの分解に及ぼす3種の酵素成分の相乗効果を確認した。

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−森林総合研究所研究報告−
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