短期二段林の上木伐採後における下木の成長

竹下郁雄,落合幸二,川崎達郎,安藤 貴

   要旨

 短期二段林の施業方法を解明するため,上木スギ−下木 スギ短期二段林と上木スギ−下木ヒノキ短期二段林の2林分で,上木をすべて伐採したあとの 下木成長について検討した。下木スギ林分は,下木の下刈りが必要でなくなった8年生で平均 樹高が2.2mのときに上木を伐採し,その後特別な保育をしていない。下木ヒノキ林分は,下木 に対し継続した枝打ちを行っており,14年生で平均樹高が4.5mのときに上木を伐採している。 下木スギの成長量は,伐採後1年目は胸高直径,樹高とも伐採前年より増加したが,増加程度 は胸高直径が樹高に比べ大きかった。その後2,3年目と増加し,成長量がほぼ一定になったの は胸高径が伐採3年目以降,樹高が4年目以降であった。胸高直径成長量は,伐採後3年目から 6年間で平均1.1pと大きく,上木伐採後に保育をしないと年輪幅が狭くてそろった材の生産は 難しいといえる。上木伐採後8年経過した16年生の平均樹高は7.7mで,同齢の単純林に比べて 低く,上木伐採後に下木期の成長の遅れを回復することはなかった。一方,下本ヒノキの成長 量は,上木伐採後1年目は胸高直径,樹高とも伐採前年より増加し,その増加程度は胸高直径が 樹高より大きく,スギ下木と同様の傾向がみられた。その後,ヒノキ下木は大きい個体ほど高 く打つ枝打ちを上木伐採後3回繰り返しており,伐採後14年間の平均樹高成長量は0.53m,平均 胸高直径成長量は5.8oで,年輪幅からみると良質材であった。短期二段林下木の年輪幅が上木 伐採後大きくなり過ぎるのを抑制するには,伐採後2〜3年間隔で枝打ちを行うことが効果的で あることが示唆された。

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−森林総合研究所研究報告−
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