第2世代のスギの模型精英樹の選抜効果と近交弱勢

明石孝輝
要旨

 集団選抜における選抜の繰り返しによる選抜効果を評価する ため,スギの幼齢期で実験を行った。第2世代の模型精英樹の選抜効果は,これら家系と対照個体 家系の成長差から確認され,第1世代で観察された選抜効果に比較し明瞭に認められた。しかし, 同時に近親交配家系が生じ近交弱勢が認められた。近親交配の生じた第1の原因は,選抜対象集団 が32の自然受粉家系で形成されていたにもかかわらず,第1世代の模型精英樹が7家系だけから選 抜されたことによる。育種事業の精英樹選抜においても,同一林分から選出された場合には,こ のようなことが生じていると考えられる。第2の原因として,第2世代の模型精英樹を選抜する集 団が,少数の花粉親を用いた不完全ダイアレルクロスによって形成されたことによる。すなわち, 片親の数が少ないことにより,半きょうだい家系が増加した。これらの結果は,次世代の精英樹 を計画的に近親交配をさけて形成された集団から選抜することの必要性を示唆している。その計 画として各交配親の交配回数を限定した部分ダイアレルクロスが考えられる。さらに,別途準備 された遺伝子保存林のプラス木を各世代の精英樹群に供給することが有効である。なお,各精英 樹の次世代での成長をみると,必ずしも家系平均値の高いものから選出された精英樹が優良な成 績を示す結果ではなかったので,実際の精英樹選抜でも,家系平均値を考慮する必要性は低いと 考えられる。

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−森林総合研究所研究報告−
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