(研究資料)

筑波共同試験地理水流域における土壌の分布とその保水・流出特性にかかわる物理的特性

大貫靖浩,吉永秀一郎

   要旨

 筑波共同試験地理水流域において,流出過程に関与すると考えられる 林地斜面の土壌の分布とその物理性に関する詳細な調査分析を行った。その結果,以下のことが明らかに なった。
1)調査斜面には火山灰を主たる母材とする褐色森林土が分布し,BD(d)型 土壌とBD型土壌に分類される。BD(d)型土壌は埋没 腐植層の存在,土壌構造,母材の堆積様式から,さらにBD(d)-A, BD(d)-R,BD(d)-V,BD(d)-Cに細分される。
2)各土壌型・土壌亜型ごとの飽和透水係数はA層で10−4 ms−1オーダー,B層で10−5 ms−1オーダーを示すところが多い。孔隙分布特性は,低水分張力域で孔隙が 少なく,高水分張力域で孔隙が多い。
3)調査斜面の表層土層厚は,尾根部や中腹部では2〜3mと変化が少ない。しかし谷部の中心では 局所的に6mを越えるところもある。調査斜面の地表の形態は,中心部が浅くくぼんだ単純な谷地形を 示すのに対し,表層土層基底では湧水点に連続する深い谷地形が認められる。
4)保水容量Sを算出した結果,直接流出に寄与すると考えられるS4−50は, BD(d)-C型で値が大きい。一方,基底流出に寄与すると考えられる S50−500は,BD(d)-A型とBD(d)-C型で大きい値を示す。またBD型においては,二つの湧水点 付近でS50−500の値がそれぞれ大きく異なる。

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−森林総合研究所研究報告−
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