樹冠下と異なった温度条件下におけるアカギ稚樹の生残と成長

谷本丈夫,豊田武司

   要旨

 アカギは,小笠原 諸島において急速に繁茂し,在来植生への侵入及び固有植物の駆逐,衰退をもたらしている。本研究は, アカギの生育抑制,あるいは生育を規制する技術開発に必要な基礎的資料を得る目的で,アカギのメバ エの消長と更新,生育適地などの生態的特性について調査した。アカギは,明治38年以前に小笠原の森 林改良,造林の促進のためにインドから移入された樹種で,適潤,肥沃な土壌において旺盛な成長をみ せ,小規模な造林地が存在していた。極めて陽樹であるが,耐陰性にも優れているため,肥沃な谷地形 の林冠疎開地,側方光線の入射する都道沿いなどに侵入繁茂している。種子の結実には豊凶が見られ, 発芽は2〜4月,造林地内ではu当たり500本以上のメバエが発生した。これらはその年のうちにほとんど が枯死した。しかし,1983年の台風で林冠が疎開した場所では生存している個体が多いことから,発芽 時の光条件が十分であると,その後における林冠の再閉鎖による光不足に耐えて生育ができ,大規模な 林冠疎開とともに成木にまで成長する。稚幼樹群の生残は,発芽量,林冠の疎開程度に応じて変化して いた。種子散布の範囲はヒヨドリなどの鳥獣による場合には極めて広いことが予想されるが,自然落下 ではそのほとんどが樹冠内に落下した。落下種子の発芽検定では,発芽率が約5〜90%16程度とバラツキ が多かった。これは採取時期及び場所に関係しているものと思われた。温度と成長との関係は,15℃程 度以下の低温においては顕著に成長が減退した。

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     −森林総合研究所研究報告−
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