東北地方におけるスギ凍裂の発生実態

今川一志,及川伸夫,糸屋吉彦,太田敬之,下田直義

   要旨

 東北地方の115か所のスギ造林地における凍裂の発生実態を 調査した。凍裂は胸高部を中心とした地上2〜3m部位に発生した。ほとんどは樹幹に1か所だけの 発生であったが,複数発生しているものもあった。樹幹における発生は南側に,急傾斜地の場合 は谷側に発生しているものが多かった。樹幹径と凍裂発生の間には密接な関係は見られなかった。 凍裂木の樹幹内部には凍裂による割れ以外にも多様な割れが出現しており,その心材含水率は異 常に高かった。また,樹幹中への気温の伝わり方はかなり緩慢なものであり,急激な気温低下が 凍裂発生に直結するとは考えられなかった。スギ凍裂は40年生半ば頃から発生し始め,その後は 少数ではあるが新たな凍裂木が出現し続けた。凍裂は目回りのような既存の割れの存在が発生の 引き金になるものと推定されたが,心材中への水分集積が根本原因と考えられた。東北地方の発 生状況は奥羽山脈沿いに多く,海岸側に少ない傾向にあり,秋田県北部に高い出現率の林分が多 かった。林分ごとの凍裂木出現率は0〜30%まで幅広くみられた。凍裂発生と生育環境との間に 特別な関係は見られなかったが,渓床沖積地に多く出現した事例は見られた。表系スギに多く発 生する傾向が明らかになった。発生機構について若干の考察を試みたが,根本原因である心材水 分の由来については明らかにできなかった。

全文情報(2,744KB)

−森林総合研究所研究報告−
森林総合研究所ホームページへ