(研究資料)

ヒドロキシダマレノン−Uの還元による立体異性トリテルペンアルコールの合成

伊藤由紀子,林 良興,加藤 厚,大原誠資

  摘要

 化合物の生理活性が化学構造上の立体異性体間で大きく異なる例は数多く知られている。クルイン材に多く含まれる,ダマラン系トリテルペンであり,カルボニル基を持つヒドロキシダマレノン−Uは還元反応によって2種の立体異性体アルコール,α体,β体の生成が可能である。本研究では,これら2種の立体異性トリテルペンアルコールを得るため,還元条件及び分離精製条件を検討した。
 ヒドロキシダマレノン−Uはカリマンタン産クルイン材のベンゼン抽出物から,カラムクロマトグラフィー及び再結晶により単離精製した(無色針状晶)。水素化ホウ素ナトリウムによる還元鼻では,ほぼ立体選択的にβ体が生成したが,Libh(sec-Bu)3を用いたテトラヒドロフラン中での還元ではα体,β体両異性体が生成した。生成比は反応温度によって異なり,反応温度を高くするほどα体の生成量が増加した。両異性体の分離は逆相系のODSカラム及びメタノール:水=9:1の溶媒系を用いた高速液体クロマトグラフィーによって行い,分取した両異性体の各種スペクトルを測定し,分子構造を確認した。

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−森林総合研究所研究報告−
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