スギの園芸3品種(メジロスギ,オキナスギ及びフイリスギ)における白斑形質の遺伝

菊池秀夫 ,大庭喜八郎

要旨

 スギ(Cryptomeria japonica (LINN. fil.) D. DON)が示す色素変異の一つに針葉・緑枝の白色斑入りがある。この白斑形質を示すスギ園芸品種のオキナスギ,メジロスギ( C. japonica form. albo-spicata HORT.)及びフイリスギ( C. japonica form. aurea HORT.)を用いて自家受粉及び正常スギとの正逆交配を行うとともに,白斑形質の親と正常形質の親との交配によるF個体の自家受粉及び戻し交配などを行い,白斑形質の遺伝様式を調べた。その結果,白斑形質はメンデルの法則に従う単一劣性遺伝子がホモ接合体のときに発現するものであり,この白斑遺伝子を3品種がそれぞれ劣性ホモ接合体で保有していると結論できた。また,オキナスギ,メジロスギ,及びフイリスギの白斑形質が同じ遺伝子座に乗座する遺伝子による形質発現であるか否かを検定するため,オキナスギの白斑遺伝子を標識遺伝子として,メジロスギとの正逆交配による遺伝子の対立性検定を行った。さらに,オキナスギ及びフイリスギに由来する白斑遺伝子をヘテロ接合体で保有しているF正常個体と白斑スギとの交配の結果,すべての家系において白斑苗が分離した。このことからオキナスギ,メジロスギ及びフイリスギの白斑形質は,同じ遺伝子座に乗座する遺伝子によって発現することが判明した。

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−森林総合研究所研究報告−
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