木材の燃焼性および耐火性能に関する研究

原 田  寿 郎

要 旨
  火災時における木材の燃焼性および耐火性能を明らかにするため,面材料については,その着火性および発熱性に及ぼす因子について考察した。また,軸材料については,新しい接合方法である接着接合を例にあげ,その耐火性能発現機構について検討した。複雑な組織構造をもつ木材の着火時間は,まさ目面あるいは板目面を加熱した場合,密度の増加に伴って遅れることがこれまで経験的に知られていたが,木口面を加熱した場合も含め,密度,熱伝導率および比熱の積である熱慣性に比例することを明らかにした。発炎燃焼時の挙動については,炭化速度が質量減少量から計算可能であることを示すとともに,着火直後の段階,定常的な発炎燃焼が継続する段階および発炎燃焼が終了する段階の三つの段階に分けて分析することで発熱速度の推移が説明できることを明らかにした。また,材料の耐火性能を評価する上で重要な指標となる着火後300秒間の平均発熱速度や裏面温度が260℃に達する時間を簡易に予測する実験式を提案した。ついで,これまで暖昧であった難燃材料の評価基準を着火性と燃焼発熱性の関係から数値的に評価し,合理的な評価基準の設定が可能であることを示した。さらに,FRP板とエポキシ樹脂を用いて接着接合された集成材梁が30分間の耐火性能を発現した根拠は,集成材断面の厚さのもたらす断熱効果と炭化層の遮熱性によることを明らかにした。

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−森林総合研究所研究報告−
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