プレスリリース 平成13年4月12日
北海道中央部でオオタカ14番(つがい)の繁殖を確認一行動圏調査により,オオタカの生息環境が明らかになる−
独立行政法人森林総合研究所北海道支所
【背景・ねらい】 【成果の内容・特徴】
【背景・ねらい】オオタカは絶滅の恐れのある中型の猛禽で,環境省により絶滅危惧II類に指定されています。オオタカは里山に生息するため,空港建設などの大規模開発と競合することが多く,保護か開発かが大きな社会問題となっています。しかし,保護対策に必要な生態的知見が不十分なため,具体的にどのような対策をとれば人とオオタカが共存していけるのかは明らかではありません。そこで本研究では,オオタカの繁殖期の生態,特に行動圏(1個体のオオタカが利用する地域)と生息環境を明らかにすることを目的として,平成10年より北海道中央部の1000km2の地域で調査を進めています。その中で,オオタカを捕獲して電波発信器を装着することにより19個体のオオタカの行動圏が明らかとなりました。このように多数の行動圏が明らかになったのは日本では初めてで,今後の保護対策を立てる上で貴重なデータが得られました。
なお,本研究は環境省予算(「国立公害防止等試験研究費(課題名:アンブレラ種であるオオタカを指標とした生物多様性モニタリング手法の開発に関する研究)」,平成11〜14年度)で実施しているものです。
調査地内でオオタカの巣を25個発見しました。これらの巣の多くは防風林のような幅の狭い林にあり,オオタカは広い森林がなくても営巣可能であることが明らかになりました。これらの巣の内,平成11年には10巣で実際に繁殖が確認され,その内の6巣から雛が巣立ちました。また,平成12年には14巣で実際に繁殖が確認され,その中の8巣から雛が巣立ちました。1つの巣から巣立った雛の数は平均2.5個体で,これは,これまでに調べられている栃木県など本州での例と変わりませんでした。
これらの巣で繁殖した個体の内19個体を捕獲し,電波発信器を装着し,その個体の位置を追跡することで行動圏を明らかにしました。その結果,1個体の行動圏は雄で平均1,281ha,雌で2,235haで,いずれも広い面積を必要としていた。過去に1〜2個体の行動圏が調査されたことはありますが,一度にこれだけ多数の行動圏を明らかにしたのは日本では初めての成果です。行動圏内の構成環境を調べたところ,森林をよく利用する鳥としては意外なことに,森林は平均11%しか含まれず,行動圏の76%が畑や水田などの開放地で占められていました。一方,都市(市街地)の面積は4%と少なく,オオタカは調査地内で都市化の進んだ地域には生息していませんでした。オオタカの生息場所の多くは,水田や畑などの開放地に防風林などの森林が点在する環境でした。そのような環境の中で,オオタカはほとんどを森林内ですごし,時折,開けた場所に出てきて野鳥などの餌を狩っていました。
今後,より多くのオオタカの行動圏を調査し,オオタカの繁殖に必要な生息環境を明らかにします。これを基に,どのような対策を行えば人とオオタカが共存できるかを具体的に示していきたいと考えています。また,食物連鎖の頂点に立つとされるオオタカが,どのような餌をとっているかを調査します。
以上の調査と並行して,現在,オオタカの生息する場所で他の動植物の調査を行っており,この結果を基に,オオタカの生息する地域の自然の豊かさを示して行きたいと考えています。
【連絡先・問合先】研究責任者:森林総合研究所北海道支所長 高橋 文敏
研究代表者:森林総合研究所北海道支所チーム長 尾崎 研一
広報担当者:森林総合研究所北海道支所連絡調整室長 今川 一志
Tel:011-851−4131(内線231)
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