プレスリリース |
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平成17年 2月18日 |
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東北地方におけるブナ結実の地域変異 −ブナはいつ、どこで、どのくらいの範囲で結実するか− |
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独立行政法人 森林総合研究所 | ||||||||
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1989年以来、森林総合研究所では東北森林管理局の協力のもと、東北地方のブナの結実実態を調査しています。今回2000年までの12年間の調査結果を分析したところ、ブナの結実が東北地方全域にわたってみられたのは2回しかなかったことがわかりました。また、豊作・凶作が、大きく3つのブロックを形成して同調していることも明らかになりました。これは長期かつ広域でブナの結実のパターンを把握した初めての成果です。 【結実調査】 東北森林管理局の各森林事務所管内においてブナ林からなる林班注1)を1つ選び、1989年以来ブナの結実状況を目視で確認し、豊作・並作・凶作・無作の4段階で評価するモニタリングを継続してきました(全部で約150地点)。そのうち数地点で実際のブナ種子落下数を調べた結果では、豊作のときの母樹直下での種子落下数はm2あたり200〜800個、並作のときは50〜200個、凶作のときは50個未満となっており、目視の結果はブナの結実状況を正確に指標していました。 【豊凶のパターンに見られる地域性】 得られたデータから、まず12年間での分布図を作成し、変動の傾向を解析しました。その結果、東北地方のブナ林の8割以上(約120地点以上)で並作以上の結実が認められたのは、1995年と2000年の2年のみでした。逆に東北地方の半分以上のブナ林で凶作・無作だったのは、1991年、1994年、1996年、1998年、1999年の5年でした。これ以外の年では、東北地方の北部に結実が集中するか、南部に集中するかのいずれかのパターンを示しました。そこでクラスター分析注2)という手法で、豊凶の年変動が同調しているブナ林を検出したところ、東北地方のブナ林は北部、南部、そして秋田中央部のそれぞれを中心とする3ブロックにわかれていることがわかりました(図)。つまり、東北地方のブナ結実の豊凶パターンは全域でピタリと同調しているわけではなく、大きく3つのブロックになっていることが明らかになりました。 |
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![]() 図 各ブロックにおけるブナ種子の豊凶パターン |
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【今後の展望と研究成果の応用例】 今のところ、どのようなメカニズムでこのような結実パターンが生じるのか、詳しい原因は不明です。可能性としては気象条件の変動や昆虫の地域的な大発生などが考えられ、今後明らかにしていく必要があります。しかし、上記のようなパターンが検出できたということは、ブナの結実予測が可能であることを示しています。この観測研究をこれからも継続することにより、東北地方のブナの生態がより明らかになることでしょう。そして、自然落下種子を利用したブナ林の再生や、ツキノワグマなどブナの実を主な餌として生きている野生生物の保護・管理にも応用することができます。 本成果は、森林の生態と管理(Forest Ecology and Management, Elsevier出版)205巻第1号(2005年2月1日)に掲載されました。 |
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注1) 林班 森林の位置を明らかにするため、尾根や沢など地形を利用して設ける森林区画の単位。 注2) クラスター分析 多変量解析法の一つで、複数のデータをある基準に基づいていくつかの集団に区分する手法。 |
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