プレスリリース

平成18年 7月28日 


本州のブナ一斉結実状況をデータベースで公開
− 森林や野生生物の保全管理に有用 −

                      独立行政法人 森林総合研究所


  ブナ林では数年に一度、かなり広い範囲でブナが一斉に結実する性質をもっています。この現象はブナ林の世代交代や、そこに生息してブナの実を餌にするツキノワグマやネズミ類などの野生生物の繁殖や行動に影響することが知られています。
  ブナ苗を生産するための種子は、ブナの一斉結実のときに確保が容易です。また、ブナの豊作の翌年にブナが凶作になるとツキノワグマが人里に出没しやすいことが知られています。このようにブナの一斉結実の情報は、森林や野生生物の保全管理にきわめて有用と考えられます。しかし、ブナの一斉結実が実際にどのような範囲で起こるのか、全国的に調査されたことはありませんでした。
  そこで、森林総合研究所は1989年から本州でブナの実の結実調査を行い、その結果をデータベース化して森林総合研究所のウェブサイトに公開することにいたしました。
    URL: http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/tanedas/index.html
 
  東北地方においては東北森林管理局の協力のもと1989年から、そして関東・中部・近畿中国においては林野庁の協力を得て2005年から行われています。
  なお、本調査およびデータベースの作成は、森林総合研究所の研究プロジェクト「ツキノワグマの出没メカニズム解明」の一環として行いました。

【2005年の結実パターン】
  2005年は東北地方から北陸地方まで広く日本海側でブナが一斉に結実して、いわゆる豊作となりました。一方、福島県から愛知県に至る太平洋側のブナ林、および中国地方の西部では、ブナが豊作となった地域はほとんどみられませんでした()。

【今後の展望と研究成果の応用例】
  近年、ブナの結実状況は県など地方自治体のレベルで調べられています。例えば岩手県では、昨年ブナが一斉に結実して豊作となり、逆に今年は凶作と予想されたことから、3月20日に「ツキノワグマの出没に関する注意報」を発令されました。しかし、ブナの一斉結実現象もクマの移動も県を広範囲で起こるものなので、各地方自治体のデータだけでは不十分です。今回のデータは、そういった限界を補うものです。また、ブナの一斉結実現象は学術的にも興味深いものであり、その原因解明などの研究をより進める上での活用が期待されます。

【調査方法】
  各地方の森林事務所管内においてブナ林からなる林班
注1)を選び(2005年は約430地点)、ブナの結実状況を目視で確認して、豊作・並作・凶作・無作の4段階で評価しました。この目視調査は、ブナの結実状況を正確に指標していることがわかっており、母樹直下での1m2あたりのブナ種子落下数は、豊作時に200〜800個、並作時に50〜200個、凶作時に50個未満となっています。



      注1) 林班
          森林管理の便のために設定された森林の区画。
          林班の境界は、河川・沢・尾根などの自然地形を利用することが多い。


図 2005年のブナの豊凶分布
図 2005年のブナの豊凶分布

独立行政法人森林総合研究所 理事長 大熊 幹章
研究推進責任者: 森林総合研究所 研究コーディネータ 福山 研二
      Tel:029-873-3211 内線401
研究担当者   : 森林総合研究所 森林植生研究領域 群落動態研究室長 正木 隆
      Tel:029-873-3211 内線356
森林総合研究所 森林植生研究領域 主任研究員 鈴木 和次郎
      Tel:029-873-3211 内線476
森林総合研究所 野生動物研究領域 チーム長 岡 輝樹
      Tel:029-873-3211 内線413
広報担当者   : 森林総合研究所 企画調整部研究情報科広報係長 椎木 栄治
      Tel:029-873-3211 内線227  
      Fax:029-873-0844

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