平成20年 5月 9日
森林降水渓流水質データベース(FASC-DB)を公開
独立行政法人 森林総合研究所
森林総合研究所では、降水及び渓流水の水質を観測し、森林に降る雨や渓流へ流出する物質の変動を監視してきました。そのうち、1995年~2004年における本支所の観測データをデータベース化し、2008年4月から森林総合研究所のウェブサイトで公開を始めました。利用申請して許可を得れば、データの一覧を閲覧でき、CSV形式のファイルをダウンロードすることも可能です。このデータベースの整備により、各地の森林域の水質を比較したり、水質の変化の兆候をとらえることが容易になり、今後、森林環境の変化をモニタリングするのに役立つものと期待されます。
独立行政法人 森林総合研究所 理事長 鈴木 和夫 |
|
研究推進責任者: | 森林総合研究所 研究コーディネータ 加藤 正樹 |
研究担当者 : |
森林総合研究所 立地環境研究領域 チーム長 |
広報担当者 : | 森林総合研究所 企画部研究情報科長 中牟田 潔 Tel:029-829-8130 Fax:029-873-0844 |
【背景と目的】 森林総合研究所では、酸性雨が大きな環境問題として注目された1990年代はじめに降水のモニタリング調査を開始して以来、森林に降る雨や渓流へ流出する水に含まれる物質の変動を監視するために、全国の7地域に設定した調査地を中心として、水質の観測を行ってきました。これらの研究成果は、これまでにも研究報告などの形で公表してきましたが、蓄積した水質データは使い易い形にはなっていませんでした。そこで、全国的なデータが整っている1995~2004年の水質データとそれに関連する情報をデータベース化し、森林総合研究所のウェブ上での閲覧とデータのダウンロードが容易にできるよう公開しました。 【データベースの概要】 このデータベースは、水質観測地点の情報と水質分析データによって構成されています。そのうち、調査地付近の状況を示す情報として、試料採取地の地名、林小班名、行政区画、経緯度、標高、最寄気象観測所の平均気温・降水量、地質、林齢などを記載しています。また、データベースの核となる水質データとして、降水(林外雨、林内雨、樹幹流)及び渓流水の水質分析値 (pH, EC, Na, K, Ca, Mg, Cl, NO3, PO4, SO4, total cation, total anion など)を収録しています 。このほかに、これまでのモニタリング調査に関連して公表した主要文献のリストを付けています。 【データベース公開の意義】 日本における降水の水質に関する研究は、これまで都市域あるいは平地を中心に進められてきており、森林域のデータはこれらに比べるとかなり少ないのが現状です。また、森林流域における渓流水の水質については、近年各地の大学演習林を中心として研究が進みつつあるものの、同じ流域で継続して調査しているところは多くありません。このデータベースは、日本各地の代表的森林で採取した試料の分析値を中心としたものであり、日本の森林域における降水や渓流水の水質に関する基礎情報になるものといえます。 このデータベースを利用することにより、日本各地に配置された地点の継続的なデータから任意のものを得ることができるため、水質の広域的あるいは経時的な解析を行うことが容易になりました。地域ごとあるいは年次ごとのデータを取り出すことも簡単にできます。また、現在もモニタリング調査は継続していますので、森林域における水質の長期的な変化をとらえることができるよう、今後さらにデータを加えながらデータベースを更新していきます。 【データベースの利用】 データベースには森林総合研究所のホームページから簡単にアクセスできますが、データを利用するには、ウェブページ上からデータ利用申請を行い、あらかじめ個別のIDとパスワードを得る必要があります。利用許可が得られれば、任意の水質データを選択して分析値の一覧表を閲覧でき、CSVファイルをダウンロードして保存することも可能となります。 【本成果のウェブサイト】 [森林総合研究所トップページ]→[データベース]→[森林降水渓流水質データベース] FASC-DB: http://fasc.ffpri.affrc.go.jp/ |
|||||
|
|||||
|
|||||
|
|||||
データベースをもとにした解析例 |
|||||
|
|||||
![]() 岩手県姫神における1995~2001年の月降水量と降水のpH・EC(電気伝導度)の平均値 (相澤ほか2003より) |
|||||
|
|||||
![]() 1997~2005年の高知市のナトリウム(Na+)負荷量への台風の寄与率(鳥居2007より) ナトリウム負荷量への台風の寄与率は年によって異なり、何年かに一度「当たり年」がある。 |
|||||