プレスリリース

平成20年 7月23日


世界最大の木材用引張り試験機を用いた
異樹種集成材の公開実験を開催します

                      独立行政法人 森林総合研究所


  独立行政法人森林総合研究所(茨城県つくば市)では、2008年7月31日(木)午後1時30分から、世界最大の「実大木材横型引張試験機」を用いた異樹種集成材の公開強度実験を行います。
   この実験で使用する異樹種集成材は、スギを内層に、強度の高いベイマツを外層に構成した大型の集成材です。スギなどの国産地域材の利用を振興するためには、このような集成材の開発が重要で、実用化が急がれています。
  これらの材料を住宅の構造材などに利用するためには、曲げ、圧縮、引張り、せん断などの強度特性を明確にする必要があります。そのため、森林総合研究所は今年3月に木材用の引張り試験機としては世界最大の試験機を導入しました。今後、同試験機を用いた新たな木質材料の開発が期待されます。

  なお、この実験は、農林水産省の「産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業」において、中国木材(株)及び広島県立総合技術研究所 林業技術センターとの連携のもとに、平成19年度から実施している技術開発課題「信頼性強度設計理論による地域材利用新構造用材料の開発」の一環として行われます。


独立行政法人 森林総合研究所 理事長 鈴木 和夫
研究推進責任者: 森林総合研究所 研究コーディネータ  神谷 文夫
研究担当者  :

森林総合研究所 構造利用研究領域 材料接合研究室
     長尾 博文

広報担当者  : 森林総合研究所 企画部研究情報科長  中牟田 潔
     Tel:029-829-8130
        029-829-8134
     Fax:029-873-0844

【導入に至る背景と実大木材横型引張試験機の仕様】
  
我が国では、スギなど国産地域材の利用を振興するため、新しい木質材料が開発されつつあります。特に内層にヤング係数の低い(たわみやすい)国産地域材、外層にヤング係数の高い(たわみにくい)ベイマツ等を配置した異樹種集成材の開発が注目を集めています。
  これらの材料を住宅の構造材などに利用するためには、曲げ、圧縮、引張り、せん断などの基準強度を明確にする必要がありますが、従来の500~1,000kNクラスの引張り試験機では、性能が不十分なために大型の集成材等の引張り強度を適正に評価することは困難でした。
  このため、森林総合研究所では2008年3月に、木材用の引張り試験機としては世界最大である容量2,000kNの実大横型引張り試験機を導入しました。
  「実大木材横型引張試験機(前川試験機製作所製 HZS-200-LB4)」は、以下に示した仕様の試験機本体、計測及び自動制御ユニット、試験治具、作業デッキから構成されています。

(1)試験機本体(写真1)
  ・寸法:長さ約14,400mm、幅約2,700mm、高さ約1,500mm
  ・最大負荷能力:2,000kN(約200tonf)
  ・負荷方式:ダブルボールスクリュー及びACサーボモータによるダイレクト駆動式
  ・適用試験体:幅20~150mm、高さ90~600mm、長さ2,000~8,400mm
  ・引張チャック間の長さ:300~6,000mm
  ・引張ストローク:最大2,000mm
  ・負荷速度:1~100mm/min
  ・試験力検出器:高精度ロードセル
  ・試験体寸法に応じて、試験体設置時に上下の位置決めが可能

(2)計測及び自動制御ユニット
  ・荷重レンジ:100、200、500、1000、2000kN
  ・制御方式:クローズドループ定速変位制御及び定速荷重制御
   (コンピュータ制御による自動試験及び自動計測)
  ・試験機精度:引張・圧縮試験機JIS B7721 1級
   (各レンジともフルスケールの1/5以上において測定値の±1.0%)

(3)試験治具(引張りチャック:写真2
  引張りチャックには、試験体をつかむチャックの部分に、鋸状の鋼板を装備したくさび形の形状を採用し、試験体をつかむ長さは500~1,200mmの間で選択可能です。
  くさび形治具の特徴は、変位が進む、すなわち引張り荷重が増大するにつれ、試験体を締め付ける力が増加し、大きな荷重に対しても試験体の滑りを防止できる機構を持っていることです。一方、変位が進むにつれ、試験体への締め付け力が過度に増大し、試験体をチャック部分のめり込みで破壊させてしまうことを防止するために、本試験機では、締め付け変位が設定した値に到達すると、引張りチャックの鋼板が油圧によりロックされ、締め付け変位をそれ以上進行させない機構を採用しています。

(4)作業デッキ(写真3
  計測及び自動制御ユニット、操作パネル、モニターを有し、伸び測定システムの設置や試験観察のための作業デッキが、引張り試験機本体側部に連結されています。



写真1 集成材
写真1 集成材(寸法:105mm×600mm×7400mm)の引張り試験の様子(試験機本体)


写真2 引張りチャック後方に付属された油圧制御によるロック機構
写真2 引張りチャック後方に付属された油圧制御によるロック機構

写真3 作業デッキ上に設置された計測及び自動制御ユニット
写真3 作業デッキ上に設置された計測及び自動制御ユニット

【 公開実験の内容 】

  今回の公開実験は、「産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業」の技術開発課題「信頼性強度設計理論による地域材利用新構造用材料の開発」(別紙1参照)の一環として実施するものです。
  本プロジェクトでは、国産地域材をより多く利用できるように従来の集成材の範疇を超えた新構造用材料を開発し、新構造用材料の規格化(日本農林規格等)の提案を行うことを目的としたもので、中国木材株式会社(広島県呉市)と広島県立総合技術研究所 林業技術センター(広島県三次市)及び独立行政法人森林総合研究所(茨城県つくば市)が連携して新技術開発を目指しています。

(1)試験体
   スギ・ベイマツによって構成された異樹種集成材
    寸法:105mm×600mm×7400mm(1体)
        105mm×480mm×6000mm(1体)

(2)実験の内容
  各試験体の両端を掴み、引張り破壊を起こすまで加力します。その際、試験体の2面において、変位計を用いて伸びを測定します。

(3)実験スケジュール
   平成20年7月31日(木) 13時30分~ 試験機及び試験体の説明
                     14時~    公開実験

(4)実験会場
   森林総合研究所 木質構造第2実験棟

 

【実験時の注意】
  試験機及び試験体が大きいため、試験の準備及び試験中において不測の事態が生じる可能性がありますので、試験体の設置時や試験実施中は実験担当者の指示にしたがって下さい。

【内容についての問い合わせ先】
  独立行政法人 森林総合研究所 構造利用研究領域 材料接合研究室 長尾博文
     電話:029-829-8308

【取材申し込み連絡先】
  独立行政法人 森林総合研究所 研究情報科 広報係
     ファックス:029-873-0844  電話:029-829-8134



別紙1

農林水産省「産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業」
技術開発課題「信頼性強度設計理論による地域材利用新構造用材料の開発」

 

1.技術開発課題の目的
  地域材をより多く利用できるように集成材の範疇を超えた新構造用材料を開発し、新構造用材料の規格化(日本農林規格等)の提案を行うことを目的にしている。
  これにより地域材の利用が飛躍的に増大することが期待できる。

2.技術開発課題の進め方

 (1)研究の方法
  本研究では,試作品を中国木材株式会社が製造し、実験による性能評価を広島県立総合技術研究所 林業技術センター、信頼性解析による強度性能評価を独立行政法人森林総合研究所が担当する。

 (2)技術開発の内容(平成19~21年度予定)
  1) 非等厚(薄板)ラミナによる新構造用材料の開発(平成19年度)
  2) 小幅板積層(間伐材 小径木利用)ラミナによる新構造用材料の開発(平成20年度)
  3) LVLをラミナとする新構造用材料の開発及び新構造用材料規格案策定(平成21年度)          

 (3) 期待される成果
  1) 地域材の需給量拡大(スギ原木需要量100万m純増,間伐材の利用促進)
  2) 歩留まり向上による柱・はり部材費(住宅建設費)の縮減
  3) 外材主体の木造住宅における地域材利用率の上昇
  4) 他の木質材料の製造基準への波及効果

<研究の組立て>

独立行政法人 森林総合研究所
 企画部 研究情報科 広報係 行き
 FAX 029-873-0844

申し込みのFAXは7月29日(火)までにお送り下さい。


取 材 申 込 書

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「世界最大の木材用引張り試験機を用いた異樹種集成材の公開実験」のご案内

 

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【取材上の留意事項】
  試験機及び試験体が大きいため、試験の準備及び試験中において危険な場合がありますので、試験体の設置時や試験実施中は実験担当者の指示にしたがって下さい。

 
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