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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.31
1994.10.21

スギ材の新たな利用をめざして


 
スギは1千万haに及ぶ我が国人工林面積の44%を占め,今後スギ材 生産量の急激な増加が見込まれる中で,その利用開発が待望されています。

中目材の大断面素材を構造材として利用する

 特に径級l8〜28cmの中目材は,従来からも住宅建築用途としては利用しにく い径級として価格面の評価も低くなっていました。この中目材を建築及ぴ非建 築分野で新たに構造材として利用することをめざして,丸太,丸太の両側を削 り落としたたいこ材,及ぴ製材品の強度性能(ヤング係数【材料の変形しにく さを表す】,曲げ強度)について検討しました。
その試験内容は次のとおりです。
(1)丸太の水分条件(含水率)は曲げ強度性能にどれだけ影響するか。
(2)丸太・たいこ材・製材品の曲げ強度性能に差があるか。
(3)曲げ強度は非破壊的手法で評価できるか。
 試験材・試験方法の概要は次のとおりです。約50〜60年生のスギの 丸太(径級24cm)から,丸太,たいこ材(幅l2cm,材長4mあるいは2m),及ぴ 製材品(正角,l2cm×l2cm,材長2m)の3種類の試験材を採取しました。各試 験材の数は1グループ34本ずつです。全試験材について,縦振動の固有振動周 波数から動的弾性係数を測定し,実大曲げ破壊試験によって曲げヤング係数 及ぴ曲げ強度を求めました。縦振動に基づく動的弾性係数の測定方法の概略図 を図1に,丸太の実大曲げ試験の様子を写真1に示しました。丸太は 生材及ぴ乾燥材の状態で,たいこ材及ぴ製材品は乾燥材の状態で,各測定・ 試験を行いました。たいこ材の実大曲げ試験は,丸みのある狭い面から加力 する場合(材長4m),及ぴ削り落とした広い面から加力する(材長2m)場合 について実施しました。

図1 縦振動に基づく弾性係数の測定方法の概略図

結果の概要は次のとおりです。
(1)丸太の曲げ強度性能は,含水率が1%減少することによって,曲げヤング 係数の平均値が約0.8%,曲げ強度の平均値が約0.7%増加しました。
(2)丸太,たいこ材,製材品の曲げ強度性能を比較すると,丸太及ぴたいこ 材(狭い面加力)の曲げヤング係数の平均値は製材品のそれよりl3〜20%高い 値を示し,曲げ強度の許容応力度を決める目安となる統計的指標値の比較では ,製材品:たいこ材:丸太で約1.0:l.l〜l.2:l.3の相対的関係が得られ ました。
(3)丸太の,曲げ強度と非破壊的評価手法の一つである縦振動に基づく動的 弾性係数との間には,曲げ強度と曲げヤング係数との間と同様に,生材時及ぴ 乾燥材時ともに相関が認められました。

写真1 丸太の実大曲げ試験の様子

 これらの結果,・大断面素材(丸太)の曲げ強度性能に及ぽす含水率の影響 は節など欠点を除いた試験体で得られている従来の結果より小さいこと, ・丸太及ぴたいこ材の許容応力度は製材品のそれより高い可能性があること, ・縦振動の動的弾性係数等を用いれば,丸太等の大断面素材の曲げ強度が 非破壊的手法によって評価し得る可能性があること,などが分かりました。
 今後,他の材種や圧縮・引張り強度性能等についても,このようなデーター を蓄積していくことによって,スギ中目材からの大断綿素材の,構造材として の利活用を進めていくことができると考えられます。

元産スギ造林木を用いて集成材アーチ橋を造る

 平成6年5月,愛媛県広田村に集成材を用いた我が国最初の一等橋が建設され ました。この橋の建設に関しては,森林総研の研究成果が幾つか生かされてい ます。

新しく架設された木橋[神の森大橋]の特徴

(l)スパン23m,有効幅5mで,戦後設計された木橋として我が国最初の一等橋 (20トントラック通行可能)です。 
(2)主要な構造部材に,広田村産の「スギ」大断面集成材を使用しています。
(3)20トンのトラックが通っても強度上十分な安全性が確保されるように, 一本一本のスギ材を特別の試験機に通して,不良品が混入していないことを 確認しました。

神の森大橋


橋の様子1


(4)床版構造には「プレストレス積層床板」と呼ばれる北米の最新技術が 応用されました。この部分にのみ,北米産のサザンパインが使用され,防腐剤 としてクレオソート油を使用しました。路面はアスファルト舗装です。
(5)構造的に耐久性を増すために,集成材の上面に小屋根を付け,更に中央 部分には大屋根を設置しています。
(6)完成した橋に20トンの車を載せて,設計通りの性能が発揮されるかどうか 実車地テストが実施されました。

森林総研の研究成果
 ・化学的に 耐久性を付与するため,接着する前の薄い板の段階で防腐剤 (DDAC)を注入にし,その後その板を積層接着して大断面集成材を製造して います。防腐剤注入が接着力に及ぼす影響については,実験によって接着耐久 性が十分であることを確認しています。
 ・アーチの2か所に接合部を曲げようとする力に対抗する「モーメント抵抗 接合部」を設け,現場で剛接合しています。この接合法の設計・施工には森林 研究の研究,並ぴに実物の1/2スケールの試験体による検証実験の結果が活用 されました。

橋の様子2


なお,これらの報告は平成2〜4年度実施された特別研究「木質系新素材による 高強度・高耐久環境調和型架構技術の開発」の成果の一部です。



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