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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.4
1991.01.30

サワラ葉の活性成分ピシフェリン酸


腐敗防止に役立っピシフェリン酸

 サワラの葉に含まれるピシフェリン酸とその一連の類縁体が強い抗酸化作用を持つことが明らかにされました。

 肉や油脂,魚介類などの不飽和脂肪酸を含む食品類は空気中に放置しておくとすぐに腐敗し,風味を低下させ,不快臭を発生します。この食品類の腐敗を防ぎ,品質を保つには抗酸化剤が用いられており,その代表的な天然抗酸化剤としてはアスコルビン酸とトコフェロール類を挙げられますが,コストの面から天然物でない合成品が使われることが多くあります。ところが,最近では,合成薬品類の人体に対する毒性や屋外における残留毒性の問題がクローズアップされてきたために,消費者の食品添加物の安全性に対する関心が高まり,合成品に代わる安全性の高い天然物が注目されるようになってきました。

 サワラに含まれるピシフェリン酸とその類縁体は,現在使用されている天然抗酸化剤,トコフェロールの約6.5〜8.5倍,合成品のBHTとほぼ同程度の抗酸化作用を持つことが明らかにされました。ピシフェリン酸類は,無色,無臭の科学的に安定な結晶なので,食品に添加された場合,食品の色,味,香りを損なわないという特徴があります。

ピシフェリン酸類の抗酸化活性

ダニを殺すピシフェリン酸

 ピシフェリン酸類は,家に生息し喘息などのアレルギーの原因となるヒヨウヒダニ類に対し強い殺ダニ作用を示しました。

 最近の住宅は建てつけが良いために,部屋の密閉度が高いほか,暖房設備も整っています。そのために,高温多湿と,なり家ダニの繁殖を促し,さらに,家ダニの死骸やふんは空中に舞い上がり,喘息などを引き起こすために,大きな社会問題となっています。

 そこで,一平方センチ当たり0.008mgの試料を含んだ濾紙の上でダニを飼育してみますと,ピシフェリン酸の場合,3日後に80%のダニが死亡することが分かりました。また,ピシフェリン酸類の殺ダニ活性は酸化の度合が進んでいるほど高いことも分かりました。

イエダニ(写真左)とサワラの葉(写真右)

ピシフェリン酸とは

 ピシフェリン酸は,1978年に当研究所で,サワラの葉の抽出物から単離,構造決定され,名づけられたアビエタン骨格を持つフェノール性ジテルペン酸です。その後,アルデヒドのピシフェラール,アルコールのピシフェロ一ルなど幾つかのピシフェリン酸誘導体も当研究所でサワラやその園芸品種であるシノブヒバ,オウゴンシノブヒバ,ヒムロ,ヒヨクヒバの葉からも見い出しました。これらの樹木は,庭園樹,生け垣として広く植栽されています。葉は,せん定しても再生しやすく,従って,木を伐採することなく生存させたまま一部の葉を採取することも可能で,再生産も容易であってバイオマス資源としても有望であるといえます。

サワラ(写真左)とヒヨクヒバ(写真右)


細胞融合ヒラタケの新品種登録出願


森総PO 1号の特性

 細胞融合で作り出されたヒラタケの1系統を職務育成品種として新品種登録することになりました。現在,「森総PO 1号」という名称で登録出願中です。

 ヒラタケには子実体の発生温度や形態の違い,胞子の色調の違いなどによって多くの系統があります。その中で,高温で子実体を発生する白色のFMC235系統と低温でも子実体を発生する灰色のFMC241系統の間の細胞融合で得た森総PO 1号です。子実体の発生温度はFMC235系統に似て比較的高温ですが色は灰色でFMC241系統に近く,両親に比べてかなり多収性です。なお,FMCは森林総研で保有している菌株の名称です。

 この系統は,早生ないし中生の菌床栽培用品種で,肉質がしっかりしているのが特徴です。現在市場に出回っている品種は肉質が軟らかく比較的いたみ易いのですが,この系統はこれらの点を改良するものとして期待されています。また,形態的にみるとこの系統は普通に栽培したときに子実体が山形で,株間のそろいがよい特徴を持っています。白色親の影響でやや浅い色をしています。子実体の発生温度は早生品種と同じく12〜13℃が最適であり,芽数は早生品種よりもやや少ないのですが,中生品種や両親に比べてかなり多いものです。

FMC235(写真左)FMC241(写真右)

細胞融合系統「森総PO1号」

細胞融合ヒラタケの育成

 きのこの細胞融合を行うためには,もとのきのこの菌株から一核菌糸と呼ばれる菌糸を作る必要があります。FMC235系統から培養菌糸のプロトプラスト化と再生により一核菌糸を得ました。また,FMC241系統からはその担子胞子の単胞子分離により一核菌糸を得ました。細胞融合を行うときに両方の系統が融合した細胞を容易に選ぶために,それぞれの系統から生長に特別の栄養素を必要とする栄養要求性突然変異株を作る必要があります。そのために,これらの一核菌糸をそれぞれ突然変異誘起原のニトロソグアニジンで処理してそれぞれメチオニンとウラシルを要求する突然変異株を得ました。それぞれの突然変異株からプロトプラストを調整し,それらを混合して細胞融合を誘起するポリエチレングリコールで処理し,それを最少培地と呼ばれる特別の培地に接種・培養して,再生して来る融合株を分離しました。分離した融合菌株から,菌糸成長と栽培試験により3菌株を選抜し,その後,5回の栽培試験を行いこの系統を選抜しました。細胞融合で作りだした株はしばしばその性質の不安定性を問われますが,反復試験の結果,この系統からは収量・形態とも安定した性質を示し,また;形態の均一性も高いものが得られました。

プロトプラストの融合(写真左)突然変異株の利用による融合細胞の選抜(写真右)

グラフ子実体100個中の硬・中・軟子実体の割合

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