ロゴFFPRI
発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.6
1991.02.26

スウェ一デンの研究者が見た

 林内作業車(小型集材車)の安全性


写真 アーネ・ノーボ氏 林内作業車(小型集材車)による事故は,年間死亡者4〜7名のほか,多くの事例が報告されています。森林総合研究所・生産技術部では,STAフェローシップ(科学技術庁奨学生)として,スウェーデン農業大学のアーネ・ノーボ氏を招いた機会に,安全性能に厳しいスウェーデンの目で,日本的機械ともいえる林内作業車の安全性について,徹底的な検討を加えることにしました。テーマは職積み式クローラ型林内作業車の人間工学的安全性と操作性に関する研究−事故分析と事故防御手段−」です。発表会では,メーカー・ユーザーともに多くの示唆を得たとして好評でしたので,ここに紹介させていただき,事故の絶滅を祈りたいと思います。

 

こんな事故が起きている

 昼食前の1時間と午後の作業の最後の1時間に多くの事故が起きています。もっとも一般的な怪我は,脚,手または胴体を対象物にはさまれて骨折するタイプです。

事故事例

積荷運転時の視界が悪い

 積荷運転時の視界は極端に悪くなります。林内作業車の前方の地面は積荷によって隠され,特に道路の右側にある障害物は極めて見つけにくくなります。また,積荷運転時の車体は安定性が悪く,小さな障害物や急激な操作によって大きな挙動を生じます。

座席に座った位置からの運転視界

 

障害物を乗り越える能力は?

 1tonの材を積載した林内作業車が,両クローラで前進して乗り越えられる障害物の高さは10p以下であり,後進では8cm以下です。なお,この高さは積み荷の位置と路面勾配によって変化します。また,両クローラで障害物を乗り越える能力は,片クローラの場合よりも劣っています。いずれの場合も操作不能になるほどの大きな車体の動きを伴います。

勾配12度の林道上で直径8cmの丸太を乗り越える状態

ここに注意したい!

機械設計

1 より簡単な1本レバーによるウィンチ操作。

2 手を離すことによって車体が停止するアクティブな操作システム。

3 ウィンチ木寄せのためのアンカー装置と固縛装置の標準装備。

4 安全作業法の解説を含む林内作業車の詳しいマニュアルの添付。

5 排気口はオペレータの反対側に設ける。

作業法

6 リモコン・ウィンチによる一人作業法の開発。

7 2人作業(3人以上も含む)のための安全作業法の確立。

8 安全靴等の保護具の着用。

道路作設

9 林内作業車の横を安全に歩くことができる道幅の確保。

10 段差のある障害物を取り除き,路面を平らにする。

11 曲線部はあまり鋭角にしない。


広葉樹施業のヒント

ケヤキ人工林の個体管理


ケヤキは箒状型樹形の典型

写真 ケヤキ

 針葉樹は枝と幹がはっきりと分かれますが,広葉樹は光の多い方へ葉を速やかに拡げるために,枝を容易に発達させられる仕組みを備えているので,枝と幹の区別がつきにくい樹形を造ってしまいます。

 したがって,良材を採るためには,

 (1)若い林では:高密度に仕立てて目標の採材長にまで枝が枯れ上がるよう維持する

 (2)中齢以降の林では:樹冠を拡張できたかどうかで,個体のサイズに大きな差ができるので,力枝を十分伸長させて幹の肥大を図るための間伐を行うことが大切です

左右のものが中央の樹冠に圧迫されて片側に偏奇しているケヤキ

力枝の取り扱いがポイント

 このようにケヤキの間伐とは,目的個体の力枝と競合する個体を除去し,力枝,ひいては樹幹そのものの成長を維持促進させる技術ということができます。

 また,この力枝を枯死させると,幹の材質を著しく低下させることになります。下の図は,材質に影響を与える“落ち残った枯れ枝の長さ”と“枝の直径”の関係を示したものです。

 4cmを超えると急に悪くなっています。このことは,枝径がこれ以上にならないように,初期の林分密度を維持し,枯れ上がりを促進する必要を示唆しています。

 ただし,力枝と競合しない中下層木は,皮焼けや不定枝の発生を抑えるため極力残すようにしたほうがよいでしょう。

 このように,個々の樹木の樹形や樹冠の配置を見ながら,間伐方法を決めていくわけで,これまでの密度管理の要領で画一的に行うわけにはいかないのです。

落ち残った枯枝(左)と枝の直径と落ち残った枯枝のグラフ(右)

ヘクタール当たり30本が最終密度

 以上のようなことから,大きな樹幹をもつケヤキが個体を維持するために必要な樹冠と,それを保障する空間を考慮すると,例えば直径1m規模のケヤキは片側に10m程度の枝を伸長させる必要があり,この規模の樹幹の生産を期待するにはヘクタール当たり30本内外が最終的に残せる密度といえます。

 

幹の縦割れ???

幹の縦割れ

企画・製作 生産技術部 お問い合わせは
森林総合研究所企画調整部研究情報科へ
〒305 茨城県稲敷郡茎崎町松の里1
TEL 0298-73-3211
FAX 0298-74-3720

目次一覧へ