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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.10
1991.05.28

対策が急がれるスギの材色と高含水率材問題


なぜ!含水率が問題にされるのか

 スギは古くから建築用材として重要な樹種でしたが,最近まで生材のままで使用されてきたという経緯があります。最近,木造建築に用いる柱,梁は乾燥材を使用するように指導されています。どのくらい乾燥すればよいのか。理想的には15%,少なくとも20%まで乾燥された木材を使うことが推奨されています。戦後に植栽されたスギは450万haを占めますが,一方では輸入材との激しい競争にさらされており,その品質の維持と管理が重要な課題となっています。スギ材を乾燥して使う方向もこういったことへの対応策の一つといえます。

写真1 スギの黒心材と赤心材

写真1. スギの黒心材と赤心材

 

なぜ嫌われるか?黒心材

 スギの心材に含まれる水分の量や分布には多様性があり,心材の含水率が高いと木材の乾燥や薬剤注入などを困難にします。特に水分含有量が異常に高い心材は,経済的に著しく価値を損ねる材の黒心化と密接な関係があり,さらには凍裂,変色,腐朽等によって誘発される二次的な欠点のために乾燥時に割れが生じるなど木材の利用上致命的な問題点を引き起こします。心材の色が黒いスギと赤いものとを比較したのが写真1.です。

写真2 高含水率材はこの様な水分分布をしている

写真2. 高含水率材はこの様な水分分布をしている(X線写真の陽画)

デンシトメータ(濃度計)で解析

 

X線でスギの素顔を見てみよう!

 スギの心材部分に存在する水分は多い個体や少ない個体があり,色も黒,赤,中間の個体,まだらなものなど種々雑多で,簡単に白黒を付けることは難しいことです。これらの中から心材水分が多いもの(黒心材)と少ないもの(赤心材)を選び,その中身(木口面)を軟X線で見たものが写真2.です。写真は陽画ですから水分が多い部分は黒く,少ない部分は白く写っています。この方法によって樹幹内でどこの部分の水分が多いか,少ないかが一目瞭然です。フィルムを濃度計で解析し水分の定量化もできます。心材と辺材との間にある心材化前衛帯である白線帯もよく観察できます。

 

どんな要因が関与しているのか?

(1)遺伝的要素も大きく関与しています。スギには種々の品種,精英樹(母樹)から増殖された林が多く,さらに在来種があり,生育環境もまちまちです。また,品種によって土壌条件等の生育環境や施業に対する環境感受性も異なります。同じ環境で育てた関東,中部地域の精英樹のクローン(110クローン)から得た結果をみると,黒心や高含水率材が生産される比率は意外に大きいといえます(表1.)

表1. 材色別のクローン数

表1 材色別のクローン数

(2)心材化に伴い木材の組織構造も変化します。白線帯では水分が低くなりますが,この部分はやがて順次心材となりますが,高含水率心材では水分が低かった白線帯部分でも心材化が進むと多量の水が何処からか移動してきて貯留されます。また,心材化に伴って液体や気体が移動しにくくなります。その原因の一つはこれらの移動を制御する仮道管相互の有縁壁孔が閉鎖されてしまう比率が高くなるからです。壁孔が開いている状態と閉鎖している様子を写真3.に示します。

写真3 仮道管有縁壁孔の開閉

(3)二次的要因も重要です。高含水率心材(黒心材)の発生は生育環境(自然落枝による枝の巻き込みの際に菌の侵入等)によっても黒心化が加速される可能性が極めて高いといわれています。これは菌が介在しますから病気のためといえます。したがって,見た目ばかりでなく,乾燥割れ等の材質劣化を引き起こします。地際付近では赤い心材であっても3番玉位あるいはそれ以上の高さから生産される丸太は黒心材であることなども菌の侵入のためといえます。

 

今後の研究方向と取り組み

(1)水分分布の把握法と定量化手法の開発。非破壊的で簡易な方法の開発が急がれます。

(2)化学成分の質と量。高含水率材化,黒心化と心材の化学成分について,その特性把握と挙動,関与性について詳細に調べる必要があります。

(3)種々の応力を受けた状態で成長している樹木が高含水率化するときの水の移動(動態)。これは木材の組織や構造分野からのアプローチが必要です。これは乾燥性,薬液等の注入性の難易と関係があるので,白線帯における水の動態,壁孔の閉鎖と役割,開閉の可逆性の有無等の解明が必要です。

(4)二次的な要因によって発現する黒心化や高含水率化との関係の解明。特に菌の介在と黒心化及び対策技術の確立が強く求められています。

(5)優良品種の選抜。品種の施業や環境に対する感受性を明らかにし,育種的に黒心材の形成を少なくする品種選抜(材質育種)実現のための判定指標を整備する必要があります。

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