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森林総合研究所
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第100号
平成14年2月28日発行
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建築物中の木材利用は

どれくらい二酸化炭素を削減しているか


木材利用の炭素貯蔵効果とは何か

 毎年,全体の成長量を下回る量の木材を伐採する持続的林業経営を行っている森林では,樹木の呼吸などによる二酸化炭素放出量よりも吸収固定する量の方が成長量分だけ多くなっており,大気中の二酸化炭素を直接的に減らしています。

 伐採した木材をすぐに燃料などに利用して二酸化炭素を排出しても,その伐採が行われた森林がその分以上吸収しているため,二酸化炭素は循環しているだけで大気中の濃度は上昇しません。

 それではその木材を建築物などで長期間使用することはどういう意味を持つのでしょうか。木材中の炭素は大気中に戻らず固定されたままで,その間もその森林の二酸化炭素吸収と伐採による木材生産は続けられています。つまり使用している期間は二酸化炭素循環の外に出たことになり,大気中の二酸化炭素を減らしたことになるのです(図1)。

図1 木材利用の炭素貯蔵効果

図1.木材利用の炭素貯蔵効果

 一年単位で考えてみると建築物などの木材炭素貯蔵量が増加すれば,その分大気中の二酸化炭素を減らしたことになり,貯蔵量が減少すれば放出ということになります。しかし放出といっても吸収前のゼロレベルにマイナス側から近づくという意味で,石油などの化石燃料からのように一方的に二酸化炭素濃度を上昇させるのとは全く意味が異なります。

 

建築物中の木材炭素貯蔵量はどれくらいか

 我が国の1998年の木材需要統計から試算すると,紙パルプを除いた製材品・合板などの木材一次製品の71%が建築用に出荷されています。その他は家具・建具用やパレット・梱包用などですが,使用期間などを考えても木材が最も多く貯蔵されているのは建築物だと考えられます。

 我が国にはどれくらいの建築物が存在するのでしょうか。それについては自治省(現総務省)が発行している「固定資産の価格等の概要調書」のデータから調べてみました。この内の家屋に関する調査は固定資産税(市町村税)を徴収するために各市町村が調べたものをまとめてあり,把握率は高いものと考えられます。対象は各年の1月1日現在の建築物です。ここでは1974年から2000年までのものについて解析しました。

 そのデータには全国の木造・非木造・非課税の各床面積の数値が示されています。非課税の建築物とは宗教法人や官公庁の建物などで,これについては木造・非木造の区別は示されていないため,木材炭素量の計算では,各年の課税対象となっている木造・非木造の比率と同様と仮定して振り分けました。

 我が国の建築物は人口増と経済成長に伴って増え続けており,2000年には床面積の総計が約78億m2となっています(図2)。

図2 固定資産調書による建築物量

図2.固定資産調書による建築物量

 これらのデータから木材炭素貯蔵量を計算するには,木造・非木造の建築物の床面積1m2当たりどのくらい木材製品が使われているかが必要です。木造では約0.2m3,非木造では大体0.04m3位であろうと仮定して,これを各床面積に掛け合わせると何m3の木材が全建築物に使われているのかが推定できます。木材中の炭素量としては水分を除いた木材1m3の重さを500kgとし,さらに木材1kg中の炭素は0.5kgとして計算しました。

 建築物中の木材炭素貯蔵量は1974年の1.6億t-C(炭素トン)から2000年の2.4億t-Cへと増加しており,その大部分は木造建築物のものです。この26年間で約0.8億t-C分の二酸化炭素を削減したことになります(図3)。なお2000年の値は,我が国の全森林バイオマスに貯蔵されている炭素量の約2割に当たります。

図3 建築物中木材炭素貯蔵量

図3.建築物中木材炭素貯蔵量

 各年に木材の炭素貯蔵効果によってどれくらい二酸化炭素を削減したかは,年毎の差をとれば分かります。1975年には500万t-C程度あったのが,木造率が減ってきているため,2000年には200万t-C程度まで落ち込んできています。それでも京都議定書の基準年である1990年の温室効果ガス排出量の約0.7%分に当たる削減効果があります(図4)。

図4 建築物中木材炭素貯蔵量の年変化 

図4.建築物中木材炭素貯蔵量の年変化

今後も木材の炭素貯蔵効果を活かすためには

 建築物は人の生活や仕事のためのものです。従って必要な建築物量は人口の変化によって変わってくると考えられます。日本の人口は2007年をピークにして以降は減少するという推計があります。もし建築物もそれに伴って減っていくとすれば,木材利用の炭素貯蔵効果も期待できないことになります。

 そこで考えられる方策としては,まず新たに建てられる建築物で可能なものはなるべく木造にして木造率を上げていくことです。木造は他の構造に比べて建築に要するエネルギーが小さいので省エネ効果にもなります。

 次に建築物の床面積当たりの木材使用量を増やすことです。構造はコンクリートや鉄骨でも間仕切り壁や内装に木材を利用することで炭素貯蔵効果が期待できます。木造でも様々なやり方で木材使用量を多くしたものはより効果的です。

 最後に毎年取り壊す建物の木材を再度建築資材にするなどのリサイクルを促進して,使われていた木材が二酸化炭素の排出源にならないようにすることです。これは廃棄物処理問題の解決にもつながります。


企画・制作:
木材特性研究領域,構造利用研究領域
研究の“森”から No.100 平成14年2月28日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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