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森林総合研究所
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第102号
平成14年4月30日発行
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燃えやすい森を見分ける

森林火災になりやすい森

 森林で火災が発生するかしないかは,火元があるかないかによって決まりますが,火災の発生した森林が延焼しやすいかどうかはその森林の状態や気象条件によって左右されます。現在,気象庁の観測データを用いて,森林火災の危険判定が行なわれています。これにより乾燥注意報として火災の危険性の高い気象条件であることは予報できます。しかし,具体的に,どこそこの林は危険ですという予報までは出せていません。

 今回,紹介するものは,林相の異なる森林の林床落葉層の含水率を推定することのできる新しいモデルを応用して,森林火災の危険度を判定し,どこが燃えやすい状態にある森林か見極めることのできる方法を開発するのに寄与するものです。

図 林床落葉層の含水率モデル

 林内気象の観測データ(気温,湿度,日射量)と林床可燃物(落葉層)の含水率の測定を行い,それぞれの季節ごとの変化を解析しました。そして,森林火災の発生件数と落葉層の含水率が20%以下と計算された日の割合を比較しました。その結果,落葉樹林の落葉層含水率が20%以下と計算された日の多い月には火災も多いことが分かりました。また,常緑樹と落葉樹の混交林は落葉樹林よりも落葉層の含水率が20%以下になる日の割合が少ないことが分かりました(図1,2)。

図 モデルの検証

 

森林火災の起きる条件の予測

 森林火災が発生するためには,火源,燃料,酸素が必要です。林野火災の火源は,タバコ,たき火の不始末などが大半なので,林床に堆積している乾燥した落葉層から燃え始めます。雨などが降ると雨水は落葉層に吸収されます。落葉層の最大吸収量を越えた分の水分は土壌に流れていきます。落葉層に含まれた水分は,日射により暖められて蒸発します。この繰り返しで,落葉層の含水率が変化しますが,晴天が続いて無降水期間が長くなると,落葉層の含水率が減少していきます。この含水率が20%以下になると森林火災が発生しやすくなるといわれています。

 森林火災時の酸素の供給量は落葉落枝の重なり方で異なってきます。ヒノキのような落葉が分解して細かく砕ける場合は,林床に密に堆積するために酸素の供給が悪く燃えにくいのですが,落葉広葉樹やスギの落葉落枝は,空隙の多い重なり具合のため,燃焼する際に酸素の供給が豊富であり燃えやすいのです。すなわち,気象観測所(アメダス)の日射量の観測値から森林の種類(落葉広葉樹林・常緑広葉樹林・針葉樹林・針広混交林など)別に,それぞれの落葉層の含水率の予測を行うことが可能となれば,最寄りの観測所のデータから,森林の落葉層の含水率が推定できるようになり,火災の発生しやすい森林が判断できるようになります。

図 燃えやすい森を見分ける


<実行課題> 
ウイ1b 森林火災の発生機構と防火帯機能の解明

玉井 幸治  後藤 義明  深山 貴文(関西支所)

吉武  孝(気象環境研究領域)

研究の“森”から No.102 平成14年4月30日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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