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独立行政法人
森林総合研究所
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第105号
平成14年7月31日発行
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棚田に木を植えよう


 

 棚田は,日本が誇る美しい田園風景です(下の写真は,高知県土佐町の棚田風景)。しかし1970年頃からの減反政策や農山村の過疎化に伴って,耕作を放棄される棚田が増えてきました。

写真 棚田

 放棄された棚田をそのまま放置しておくと,荒れ地となって景観を損なうだけでなく,土砂崩れなどの災害を起こす危険性がでてきます。

 

 耕作放棄された棚田の跡に,スギやヒノキが植林されている光景は珍しくありません。

写真 棚田の跡への植林

 耕作が放棄されて20年,30年を経っても,段が崩れていない棚田も多くあります。畦や耕作面間の斜面にも木が植えられていることが多く,根系によって土層が保護され,侵食や崩壊を抑止しています。

 棚田跡地の土壌を掘ってみると,まだ水田の名残を留めています。かつての作土層の下に,堅い耕盤層があり,水を通しにくいので過湿気味です。植栽木の根がこの層を貫通すると,水の通りがよくなります。

写真 棚田跡地の土壌

 旧作土層の最上部にある,地表に接した黒い部分は,樹木を植栽したのちに集積した有機物です。土壌はこれからも,長い時間をかけてゆっくりと変化していきます。

 

 この図は,棚田跡地にスギやヒノキを植栽した場合に,年数の経過とともに土壌がどのように変化するかを高知県の土佐町内で調べた結果です。

図 棚田跡地への植栽後の土壌の変化(炭素貯留量)

図 棚田跡地への植栽後の土壌変化(表層土壌の保水容量)

 上の図は土壌中の炭素の量,下の図は土壌の孔隙量を基に計算した保水容量(何ミリの降雨を土壌中に貯留できるかという数値)で,いずれも深さ30cmまでの表層土壌について積算したものです。

 

 図から読み取れる通り,年数の経過とともに炭素量や保水容量が増加する傾向があります。

 

 図の枠外右の緑色の三角印は,棚田の周囲の山林の土壌について,同様に調べた参考値です(深さ30cmまで)。一般に森林の土壌は,炭素量や孔隙量が多いといわれますが,棚田跡に植林して30年以上経過すると,表層土壌の性質は周囲の山林に近づく様子が分かります。

 

 これまで,棚田跡へ樹木を植栽しても,漠然と成長は悪いだろうと考えられてきました。下の図は,棚田跡地でのスギとヒノキの成長過程を調べた結果です。

図 棚田跡地でのスギとヒノキの成長過程の変化

 スギの樹高は,30年で20mに達している例が多く,周囲の山林と比べても引けを取りません(図中の緑矢印で示したレンジは,この地方のスギ・ヒノキの適地の30年生時の樹高の目安)。また,直径成長についても樹高と同様に良好でした。

 

 棚田跡地は,一般の林地と比べて,地面が平坦で作業がしやすく,下層植生が少なく下刈りの手間が省けるなどの長所があります。今回の結果から,遊休地の有効利用のためにも,環境保全のためにも,管理できない棚田には,もっと植林を進めるべきであると考えられます。

<実行課題>エウ3a 急峻山岳林における立地環境特性の解析と複層林への誘導のための森林生態系変動予測技術の高度化
鳥居 厚志  篠宮 佳樹  稲垣 善之  山田  毅  酒井  武  酒井  敦
倉本 惠生(四国支所)
田淵 隆一(多摩森林科学園 前所属:四国支所)
吉永秀一郎(立地環境研究領域 前所属:四国支所)
研究の“森”から No.105 平成14年7月31日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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