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森林総合研究所
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第107号
平成14年9月30日発行
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部屋の内装に木材を使うと快適になる?


 部屋の内装に木材が使われていると,快適でくつろいだ気持ちになります。このようなとき,私たちの体も「くつろいだ」状態になっているのでしょうか? 木材の見た目のよさが与える快適感について,生理指標を使って調べてみました。

 実験用に広さ8畳のモデルルームを作りました(写真1)。部屋の内装は,以下の通りです。

木材率*30%・・・床:木材 壁・天井:クロス貼り

         最も一般的な居間の内装スタイル

木材率45%・・・床全面と壁の半分ほどに木材を使用

木材率90%・・・床・壁・天井が木材

柱・梁・・・・・30%の部屋に柱・梁を化粧的に加えたデザインの異なる部屋

*床・壁・天井の面積に占める木材の割合

 測定したのは,血圧,脈拍数と脳血流量です(写真2)。血圧と脈拍数は,体のリラックス状態を反映します。脳血流量は脳の活動状態を反映します。これを近赤外線分光分析法**という手法を用いて左右の前頭部で測定しました。

 被験者に各部屋をそれぞれ90秒間見てもらい,生理指標を連続測定しました。また「快適感」「活気感***」について感じたことを申告をしてもらいました。

 なお,この実験には住友林業株式会社の協力を得ました。

写真1 木材率とデザインの異なる各部屋の内装
写真2 実験風景
写真1. 木材率とデザインの異なる各部屋の内装
写真2. 実験風景

**脳内に近赤外線を照射し,ヘモグロビンによって吸収された後に戻ってくる光の量を測定。活動時にはヘモグロビンが多く存在し,戻ってくる光の量が少ないという原理を利用。

***POMSという心理テストで測定される感情尺度の一つ。POMSはそのときの気分を六つの感情尺度に分けて測定するテスト。

 

●木質系の内装は快適

 図1は各部屋の主観的「快適感」です。どの部屋も「快適」と評価されました。また,一般的な木質内装である30%よりも木材量を増やした45%の方が快適感は高く,90%までいくと快適感が下がっています。

図1 木材率の異なる部屋における主観的「快適感」

図1. 木材率の異なる部屋における主観的「快適感」

 図2は脳血流量の変化です(被験者10人の平均値:図3も同様)。どの部屋でも脳の活動が認められましたが,木材率90%の部屋では約80秒後から急激に低下しています。私たちはこれを,90%では木材量が多すぎ,被験者が飽きてしまったと解釈しました。多くの人が「快適」と感じる適切な木材量があるのではないかと考えられます。

 なお,脈拍数は30%の部屋では減少し,45%の部屋では増加しました。つまり,同じ「快適」でも,リラックス感のある快適さと,活動的な気分をもたらす快適さがあると推測されます。

図2 木材率の異なる部屋における脳血流量の変化

図2. 木材率の異なる部屋における脳血流量(総Hb濃度)の変化

 

●生理的な測定の重要さ

 図3は木材率30%の部屋と,これに柱・梁を付け加えた部屋における脈拍数の変化です。30%の部屋では脈拍数は減少しましたが,柱・梁の部屋では増加しました。しかし,主観的な「快適感」「活気感」はどちらの部屋も差がありませんでした。これは被験者が主観的には部屋の違いを感じられなくても,生体は30%の部屋ではリラックス,柱・梁の部屋では活動的な状態,と異なる反応をしたことを示しています。このことから,真に人間の快適さや健康に役立つ木材の使い方を考えていくためには,「好き」「嫌い」といったアンケートだけではなく,生理的な測定が不可欠であると考えて研究を進めています。

図3 デザインの異なる部屋における脈拍数の変化

図3. デザインの異なる部屋における脈拍数の変化

 人の状態を計測するという研究はまだ始まったばかりですが,木質系内装の違いが人間の快適感に影響を与えるということが分かりました。今後も,人の感性や個人差などを考慮しながら,人と木材とのよりよい関係を探っていきます。

<実行課題> ケア3b

 生理応答を指標とした木質居住環境の快適性評価技術の開発

恒次 祐子(構造利用研究領域)  宮崎 良文(樹木化学研究領域)

研究の“森”から No.107 平成14年9月30日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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