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独立行政法人
森林総合研究所
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第110号
平成15年2月28日発行
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やっかいな敵? それとも単なる居候?

―クマバチとダニとの深〜い関係―

 昆虫には、“巣”を作るもの(たとえばアリ)や、全く巣を作らないもの(例えばモンシロチョウ)がいます。多くの昆虫は微生物からほ乳類に至るまで様々な生物と共生していますが、特に巣を作る昆虫の多くでは巣の中で幼虫と一緒に暮らし、成虫になったときは一緒に巣を離れていく共生者が見られます。このような巣を作る昆虫と共生者の関係のうち、キムネクマバチとクマバチコナダニの関係を見てみましょう。

写真 キムネクマバチとクマバチコナダニ

写真 キムネクマバチとクマバチコナダニ

キムネクマバチは函館付近から種子島・

屋久島に分布します。日本で一番普通の

クマバチです。

背中の毛の中をよく

見ると数百もの小さな

生き物がいます。

平均体長約300μm。その小さな生き物はクマバチコナダニというダニです。

図 日本周辺のクマバチの分布
写真 クマバチの巣
日本周辺のクマバチの分布
クマバチ雌成虫は、直径5〜10cm程度の枯れ木や枯れ枝に穴を掘って巣(=坑道)を作ります。巣の中に花粉と花蜜を混ぜた花粉団子を作り、卵を産んでから仕切壁を作ります。従って、それぞれのハチの子は個室の中で育ちます。

なぜダニはハチの体に付いている?

 ダニはクマバチの毛をしっかり握り、さらにおなかの吸盤でハチの体表面に付着しています。新たな環境に移動するために、他の生物を移動手段として利用することを“便乗”と呼びます。このクマバチコナダニも、便乗中には餌もとらずに、ひたすら新しいすみか(=新しいハチの巣)に着くのを待っています。ハチが巣を作り始めると、ダニは巣の中に降りてゆきます。

写真 前脚の爪でクマバチの毛をつかむクマバチコナダニ

前脚の爪でクマバチの毛をつかむクマバチコナダニ 

付く場所によって違うダニのサイズ

 このダニには大型のものと小型のものがいます。おもしろいことに、ハチの体に着く場所によってダニの大きさが違うのです。大型はおもにハチの胸にたくさん生えている毛につかまっていますが、小型はハチの胸部や腹部にある小さなくぼみ(ダニ室)に入っています。小型のダニは安全なダニ室に入り込み、そこに体が入りきらない大型のダニは胸部の毛などにつかまるのかもしれません。

図 ダニの体長 

ダニはハチの巣の中で何をしている?

 ハチの巣(個室)の中には、ハチ幼虫と花粉団子しかありません。この時期、ダニは花粉団子を食べて発育し卵から成虫になります。この時期のダニは他人の餌を盗んで食べるため、「労働寄生者」と呼ばれます。やがてハチの幼虫が糞をすると、ダニはこの糞を食べるようになります。従って、ここで「掃除屋(スカベンジャー)」へと立場を変化させます。

写真 クマバチコナダニ成虫

写真 クマバチコナダニ成虫

クマバチコナダニ成虫体長約0.5mm 

ハチが巣立つときダニはどうする?

 ハチが蛹になる頃、ダニもハチに便乗する準備を始めます。便乗するときのダニは、増殖しているときとは全く違う体のつくり=便乗に適した体のつくり(口器がない、体表面が堅い、吸盤や爪を持つ)をしています。この体のつくりは越冬にも適していると考えられています。

写真 クマバチの毛をつかむダニの爪

クマバチの毛をつかむダニの爪(矢印) 

クマバチにとってダニは厄介者? 共同生活に適した同居者?

 クマバチコナダニにとって、クマバチは代々一緒に暮らすことが義務づけられた宿主です。しかし、クマバチにとっては...? ほとんどすべてのクマバチの巣にこのダニがいるので、特にハチに悪さをするというわけではないようです。これはまだ確かめられてはいませんが、ダニがいることによってハチの幼虫が死にやすくなるとか、栄養を奪われて体が小さくなるということはないと思われます。どうやらこのダニは、ハチにとっては無害な「居候」といったところが正解なのでしょう。

<実行課題> 
アア1a 森林動物・微生物の多様性評価とモニタリング手法の開発

岡部貴美子  牧野 俊一(森林昆虫研究領域)
研究の“森”から No.110 平成15年2月28日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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