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森林総合研究所
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第113号
平成15年5月30日発行
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冬に下刈りをしたらどうなるだろう?


写真 夏の下刈りの様子

はじめに

  健全な森林の育成のためには、造林地の下刈りはとても重要です。雑草木などから植栽木を守るために、下刈りは夏に行われることが常識とされています。しかし、炎天下での過酷な労働であることや、ハチなどによる被害を受けやすいことなどが問題となっています。

夏の下刈りの様子

・植栽木が雑草木に覆われて見えにくい

・炎天下での作業が大変

・雑草木が茂っていてハチの巣などが確認しにくい

なぜ、冬に下刈りをしなかったのだろう?

  一般に、冬に地上部を刈り払っても下刈りの効果が小さいといわれています。それは、夏緑性の草本類の地上部は枯れていますし、灌木類を含めて多くの植物は地下部に栄養を蓄えて翌春に備えているためです。

写真 冬の下刈りの様子

冬の下刈りの様子

・雑草木が枯れて見通しがよい

・冷涼な環境で作業がしやすい

除草剤と組み合わせて冬に下刈りをしてみた

  そこで、毎冬の下刈り時に除草剤(ET粒剤)散布と組み合わせることで、雑草木を抑える効果や労働負担が毎夏行う下刈りに比べて変化するのか調べました。

 

雑草木の抑制効果は?

写真 植栽木と主な雑草木の高さの変化

植栽木と主な雑草木の高さの変化

・両処理とも雑草木類の最大高は

 約2m以下に抑えられている

・冬下刈り+除草剤によってススキが抑えられ夏の下刈りと同等の効果が期待される

 効果は夏の下刈りと同様でした。グラフには示していませんが、残念なことに除草剤散布を組み合わせないと、冬の下刈りのみではススキが増えて植栽木を被圧してしまうことが分かりました。

作業は楽になっただろうか?

図 心拍数の変化から作業のつらさを計算

・心拍水準=作業時心拍数÷最高心拍数×100(ただし、最高心拍数=220−年齢)

・除草剤散布は、背負い式の動力噴霧器による

心拍数の変化から作業のつらさ(心拍水準)を計算

・夏下刈り、冬の下刈り、冬の除草剤散布すべてがきつい作業

・冬に下刈りを行なっても労働負担は軽くならない

・労働負担の程度は作業員によって異なる

作業能率の関係

・冬に下刈りを行うことによって作業能率が若干向上する

・冬の下刈り能率アップには地形のゆるいところほど効果がある

アンケートの結果

○ 植栽木・地形の認識、ハチなどへの不安

  →冬下刈りの方が「快適だ」

× 動力噴霧器の重さ、汗による冷え(特に休息時間中)

  →冬下刈りの方が「不快だ」

・除草剤の使用について:健康リスクが低いことについては比較的理解が得られていたが、実際の散布に対しては意見が分かれた

図 作業能率の関係

・作業能率:下刈り開始から休息までに刈り払った面積を

      作業にかかった時間で割って算出した

 冬に下刈りを行うことにより作業能率が上がり、結果的に夏下刈りに匹敵する労働負担を感じるまで、テンポを上げて作業を行っていた可能性があります。慣れない作業に対する肉体的・心理的な負担が加わり、冬に下刈りをしてもキツイ労働だという評価がされたものと思われます。

 このように冬下刈りには解決すべき課題がまだまだ多くありますが、冬場の仕事を創出するメリットもあります。林業従事者の減少・高齢化に対して、下刈り作業の省力化・安全性確保がより強く求められています。将来に向けて実効性のある技術とするべく研究を進める必要があるでしょう。

メリット

・冷涼な気象のもとで作業能率が向上する

・ハチなどへの心配が少なくてすむ   

・植栽木や足場の確認が容易で安心できる

・冬場の仕事を創出できる       

冬に下刈りをして

分かったこと

デメリット

・コストに見合った除草効果が得られていない

・短い日長により作業時間が制約される   

・慣例外の作業であるため作業員がとまどう 

・休息時に汗の冷えが気になる       

・雑草木類や絡んだツルが枯れて硬くなる  

残されている課題

・コストに見合う効果を得るための除草剤の選定や、除草剤の残留程度を明確にする必要がある

・植生や積雪等の気象条件の違いが効果に及ぼす影響を解明する必要がある         


<実行課題> カア2a 
天然更新・再生機構を利用した省力的森林育成技術の開発

伊藤 武治・清野 嘉之(森林植生研究領域),奥田 史郎(四国支所),山田 容三(名古屋大学大学院生命農学研究科),鹿島  潤・今冨 裕樹(森林作業研究領域),竹内 郁雄・酒井  敦(四国支所),島田 和則(気象環境研究領域),五十嵐哲也(森林植生研究領域),関東森林管理局東京分局森林技術センター
研究の“森”から No.113 平成15年5月30日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
〒305-8687 茨城県つくば市松の里1
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