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森林総合研究所
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第115号
平成15年7月31日発行
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スギ心持ち柱材の乾燥割れを防ぐ


 十分に乾いていないスギの柱材を住宅に使用すると、時間が経つうちに狂いが生じ住宅のさまざまな不具合につながる恐れがあります。そのため使用前に乾燥処理が必要ですが、スギは他の樹種に比べて水分が多く乾燥に時間がかかり、また心持ち材であるため割れやすいので品質を保つことが困難です。今、スギ心持ち柱材を速く乾燥し、同時に割れを防ぐための技術開発を行っています。

 

心持ち材は特に割れやすい

 柱材は材表面から内部の方へ徐々に乾いていきますので外側の層が先に縮み始めます。このとき、半径方向に比べて年輪に沿う方向には2倍くらい縮もうとするため、図1に示すように年輪に沿った方向にひっぱる力(引張りの乾燥応力)が生じることになります。ゆっくりと乾燥しても応力の発生は避けられないので、心持ち材は特に割れやすいのです。写真1は、天然乾燥によって生じた典型的な割れです。

図1 心持ち材における乾燥割れの発生

図1. 心持ち材における乾燥割れの発生

 乾燥割れを抑制するには、熱処理(木材を加熱し材温を上げること)の効果(表1)を活用することによって、材の収縮や応力の発生を抑制しなければなりません。

写真1 天然乾燥で生じた材面の大きな割れ

写真1. 天然乾燥で生じた材面の大きな割れ

表1. 割れを抑制するための熱処理の効果

表1 割れを抑制するための熱処理の効果

乾燥のスピードアップと割れ抑制の両立は難しい

 図2には、さまざまな温度でスギ柱材の蒸気式乾燥による試験を行った結果を示しています。温度、湿度の組み合わせで割れの出方はさまざまに変わります。高温処理では、特に適切な温度・湿度コントロールが必要になります。

図2 さまざまな乾燥条件における割れの発生状況

図2. さまざまな乾燥条件における割れの発生状況

   (各試験とも柱材49本を用いた)

圧力コントロールで割れを抑制する

 常圧(1気圧)における通常の蒸気式乾燥では、高温でもうまく仕上げるのに最低1週間程度が必要です。しかし、圧力容器内において1気圧以上の高温過熱蒸気で乾燥すると、3日以内で仕上げられることが分かりました。図3に一例を示しますが、処理温度を一定に保ちながら容器内の圧力を連続的に変化させる方法です。高温高湿条件を用いるので材色の変化は避けられませんが、表面割れ、内部割れともに抑制されます(写真2)。これは材の収縮が変化し、全体的に応力の発生が抑制されるためと考えられます。また、この過熱蒸気処理は、短時間処理で割れ防止をした後に天然乾燥などでじっくり仕上げていく前処理としても活用できます。

図3 圧力容器内の温度と圧力の制御方法

図3. 圧力容器内の温度と圧力の制御方法(注:0.1MPa≒1気圧)

写真2 圧力容器内で加熱蒸気処理した柱材の断面

写真2. 圧力容器中で過熱蒸気処理した柱材の断面

おわりに

 乾燥処理は木材から水分を取るという単純な工程ですが、処理する方法や条件を選択することによって、品質や能率、コストがさまざまに変わります。今回ご紹介したのは割れの抑制を主に考えた乾燥処理方法ですが、今乾燥材を生産する方法や条件の選択肢は広がりつつあります。強度性能や耐久性などの評価を踏まえ、材の用途に合わせて適切な選択が可能になるよう、研究開発を行っています。

<実行課題>ケイ1c

圧力・温度条件の制御による高速乾燥技術の開発


黒田尚宏・齋藤周逸・小林 功・石川敦子(加工技術研究領域)
研究の“森”から No.115 平成15年7月31日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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