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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.20
1992.12.21

台風の被害を人工衛星で観測する


 1991年秋,日本に平年の2倍近い数の台風が接近しました。中でも台風17号と19号はともに記録的な暴風を伴いながら九州北部を直撃し,農林業に観測史上最大級の被害を与え,さらに日本海に抜けて北陸地方や東北地方にも大きなツメ跡を残しました。

 暴風により樹木の幹が中ほどから折れたり,根こそぎ倒れたりするなどの林業被害は全国30道府県に及び,被害面積は民有林だけで約6万ヘクタールに上ります。とくに九州北部各県は大きな被害を受けました(大分県2万2千ヘクタール,福岡県1万3千ヘクタール,熊本県6千ヘクタールの民有林)。この中には,日田・八女・小国などの有名林業地も含まれています。

 各県による被害地の確定には,被害直後に撮影された空中写真による観測と現地調査とが用いられました。しかし,空中写真は大分県だけでも約300枚あり,それらをすべて人の眼で判読するのは大変な作業です。

 人工衛星で撮影された画像ならば数シーンで九州全域をカバーすることができ,またコンピュータで一括処理ができるので人手も時間も少なくなります。衛星画像は,被害の概況を早く,全体的に把握するのに適しています。

台風の被害を人工衛星で観測する

台風17・19号の概要

 台風17号は1991年9月14日早朝5時半ごろ長崎市付近に上陸し,7時すぎに福岡市付近を,午前中に山口県沿岸を通過,午後9時ごろ山形県米沢市付近で温帯低気圧となりました。

 台風19号は9月27日午後4時すぎ長崎県佐世保市の南に上陸し,2時間ほどで福岡市から北九州市を通過して日本海へ抜け,翌日ふたたび北海道に上陸してオホーツク海で温帯低気圧となりました。とくに台風19号は勢力が強く,最大瞬間風速は阿蘇山で毎秒61メートル,熊本市で53メートル,日田市で44メートルなど北部九州各地で記録を更新しました。

図 台風17・19号の進路

台風17・19号の進路

人工衛星による画像

 右の写真は,海洋観測衛星MOS−1のMESSRと呼ばれるセンサーで撮影された九州北東部の画像です。

 MOS−1は国産の人工衛星で,地球の周囲を南北に回りながら世界中を観測しています。現在は同型機2機が飛んでおり,8〜9日に1回同一地点を観測しています。

 MESSRは地表の可視光線と近赤外線の反射を観測するセンサーです。このセンサーでは地上の50メートル四方の大きさのものを見分けることができます。

 森林の被害地は,台風前に撮影された画像(1991年4月)と,台風後に撮影された画像(1991年11月)を重ね合わせ,その問の被害による変化を調べて検出しました。

写真 人工衛星による台風後の画像

人工衛星による台風後の画像

台風被害地の鳥瞰図

台風被害地の鳥瞰図

地形による被害の発生状況

 左の写真は,国土地理院の国土数値情報を用いてコンピュータの中で地形を再現し,被害地を表示させた鳥瞰図で,大分県玖珠町付近の様子を表しています。

 このように,コンピュータで衛星画像と地形図を重ね合わせると,地形による被害の発生傾向を求めることができます。例えば,今回の暴風による森林被害は南〜南西斜面に多く発生しているという傾向が,この分析からも確認されました。左の写真で白く写っている部分が被害地です。

市町村別の被害状況

 右の図は,森林面積に対する被害面積の割合を市町村別に表しています。ここでは森林面積,被害面積ともに衛星画像から求められた値を,また市町村界は国土数値情報をそれぞれ用いています。

 以上のように,衛星画像を用いた被害調査は地図情報を援用しながらコンピュータで処理するので,広域にわたる被害の全体像を速やかに把握するのに適しています。この方法と従来の空中写真及び現地調査を組み合わせる方法は,正確で効率がよく,被害調査のみならず資源調査などにも広く応用できるため,目下実用化に向けての研究に取り組んでいます。

市町村別被害度図

市町村別被害度図


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