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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.21
1993.01.27

木の太りを測る


 大きな樹木の成長を測る場合,手の届く高さでの幹の太さは最も観察しやすい項目のひとつです。太さを測る間隔と精度を細かくしていった時,どのようなことがみえてくるのでしょうか。今回は「木の太り」について,農林水産省の大型別枠プロジェクト「生態秩序」で観察している経過について少しご紹介します。

 

木はいつ太るのか(若い林の例)

 アルミバンド製の成長バンド(デンドロメーター)を,胸高直径10〜40cm台のいろいろな大きさの木に巻き付けて,季節変化を観察しました。樹種は込みになっていますが,肥大成長は早い個体では4月下旬葉が出る前,遅いものでも6月上旬から始まり,8月半ば頃まで盛んな太りが続くようです。興味深いのは各個体がいつ頃最もよく太るのかということです。図−1に肥大成長が観察された期間と,太りかたが最も盛んな時期を示しました。縦軸は年間の太りです。上層の大きな個体はよく太り(上の3個体),成長期間の中頃に成長速度のピークがみられます。一方,小さな下層の個体はあまり太れず(下の3個体),ピークも太り出しのごく初めに少し太るのがせいぜいというところでした。このような優勢・劣勢個体の違いだけでなく,各樹種の成長パターンの特徴を理解していくためにも,より多くの観察を積み重ねていく必要があります。

図1 肥大期間と太りのピーク

図-1 肥大期間と太りのピーク

 

より細かく,より連続的に

 林の中で起こる現象のよりよい理解のためには,対象の拡大・深化を図ることが欠かせません。太りを調べるうえではより細かく,より連続的なデータをとることが望ましいのですが,いつもデンドロメーターを眺め続けているわけにはいきません。そこでデンドロメーターに可変抵抗器を取り付けた簡単な仕掛(Hi−Fiデンドロメーター)をデータロガーにつなぐことで数分〜1時間間隔で,1/100ミリ単位の周囲長の動きを記録できます(図−2)。

図2 Hi-Fiデンドロメーターの簡単な作り方

図-2 Hi−Fiデンドロメーターの簡単な作り方[特許申請中]

 

樹種による太りのパターンの違い

 Hi−Fiデンドロメーターの精度と便利さで観察を行うと,例えばミズナラなどの環孔材樹種とカツラなど散孔材樹種とで太り方の様子が違うということが分かってきました。図−3では,ミズナラは階段状の太りが間欠的におきています。これはわずか30分間隔の観察の間に生じるほど忙しいものです。これと比べるとカツラはゆっくり,かなり連続的な太りとしてとらえられます。ミズナラの場合,一回に生じる太りは0.1〜0.3mm程になります。環孔材では名前のとおり大きな道管がリング状に幹を囲む形で並んでいます(図−4)が,このように太い道管の存在と太りの間になんらかの関係があるのかも知れません。急に膨らんだような太り方といえます。散孔材では小さな道管が列をなさずに集まっているため,管の太りはよりなめらかなパターンを示すのだと説明できそうです。

図3 ミズナラとカツラの太り方
図4 ミズナラとカツラの道管
図-3 ミズナラとカツラの太り方
図-4 ミズナラとカツラの道管

写真提供:木材利用部組織研究室 藤井智之室長

太りを引き起こすもの

 幹の太りをおこすものは,もちろんまず光合成産物による形成層での細胞分裂です。道管や篩管の「素」もこうして出来上がります。しかしこれだけではまだ不十分です。水が入って細胞が押し広げられてようやく管として完成するわけです。ヤチダモなどでは春先葉による生産が始まるだいぶ前から早くも幹の太りがみられます。これは前年に分裂をすまして用意されていた道管の「素」に水が届いて膨れるのだろうと考えられます。水と太りの深いつながりの一例として図−5に降雨とミズナラの太りのパターンを示しました。縦棒で示した雨降りの後数時間内にポップコーンがはじけたように階段状の太りが起こる傾向がみられます。

図5 降雨とミズナラの太りのパターン

図-5 降雨とミズナラの太りのパターン

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