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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.24
1993.07.19

表層土壌の移動を測る

万物流転! 重力には逆らえません!

森林を育む土壌

 雨の合間の日差しが目にしみる季節になり,梅雨明けが間近になりました。恵みの雨に森林がいきいきとしています。ところで,森林の植物は,皆そこに土があるから生きています。土なくして森林の維持・造成を語ることはできません。土はまさに母なる大地なのです。森林土壌は農耕地土壌と異なって人が作るわけではなく,森林が育むもので,森林と土壌は切っても切れない関係にあるのです。森林を適切に維持・管理していくことは,そこにある土壌を育むことになるのです。

 日本の山は一般に急な斜面が多く,あえて言えば,森林土壌はそこにある植物とともに斜面にへばり付いているわけです。ですから,適切な森林管理が行われないと,土壌,特に養分に富んだ表層土壌の流亡を招くことになります。ここでは森林に覆われた斜面での表層土壌の移動の測り方を紹介します。

 

土砂受け箱とは

 土砂受け箱とは,図1のような縦20cm,横25cm,高さ15cmの木枠の後面に寒冷紗(かんれいしゃを)張りつけたもので,これを斜面に置いて,移動してくる土砂を捕らえます(写真1)。受け箱の前面には,地面とスムーズに接触するようにステンレス板を付けています。箱の中にたまった土砂を定期的に回収することにより,表層土壌の移動量が分かるわけです。

図1 土砂受け箱

写真1 土砂受け箱を設置した様子

図1. 土砂受け箱
写真1. 土砂受け箱を設置した様子

施業によって違う土砂移動量

 枝打ち施業を行ったヒノキ林での測定例を図2に示します。このヒノキ林は傾斜25°内外の斜面上にあり,林齢は25年生で,下層植生は非常に貧弱になっていました。1年間に土砂受け箱にたまった物の内訳をみると,細土(2mm以下の土)ばかりでなく,石礫(2mm以上)や有機物も含まれており,結構いろいろな物が移動していることが分かります。この時には,土砂受け箱を等高線に沿って1カ所に10個設置したのですが,箱毎の移動量に変動が大きく,表層土壌がかなり局所的に移動していることも分かります。

 次に近年,各地に導入されつつある複層林施業地で調べた結果を図3に示します。ここでは,ヒノキ一斉林を複層林化するために間伐を行った際,表1に示すような数種の方法で,林内に残された枝条を処理し,土砂移動量を比較しました。図3から,棚積み区及び散乱区の移動抑止効果がおわかりいただけると思います。このことは,適切な森林施業が土壌保全の面からも重要であることを示しています。

図2 受け箱ごとの移動物質の内訳
図3 各処理別細土移動量の変動
図2. 受け箱ごとの移動物質の内訳

(10回繰り返し)

図3. 各処理別細土移動量の変動

(各処理毎に土砂受け箱20個の平均)

表1. 調査区別枝条処理の方法

表1 調査区別枝条処理の方法

図4 棚積み区の概略図

図4. 棚積み区の概略図

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