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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.25
1993.10.13

農薬に頼らずにスギの材質劣化
病害虫被害を防ぐ!

-良質な九州産材の生産を目指して-


 スギ・ヒノキは建築用材の生産樹種として林業上の重要な位置を占めていますが,その材の価値を下てしまう材質劣化病害虫の被害が全国的に問題となっています。九州支所は,スギ・ヒノキの人工林率の高い九州地域の林業を守るため,農薬に頼らずに,材質劣化病害虫をいかに防いでいったらよいかの研究を進めています。

品種選抜による赤枯病防除

”溝腐れ病”の原因  赤枯病
 赤枯病は苗畑での重要病害で,現在は育苗中殺菌剤の散布なしには健全な苗木を得るのが不可能です。そればかりでなく,うっかり病気にかかった苗木を山に持ち出すと,その周辺の木にも病気が広がり,成長につれて溝腐れ被害となり,材として使いものにならなくなってしまう恐い病気です(図1)。

図1 赤枯病菌による溝腐れ被害の発生

抵抗性の検定  

 九州にはたくさんのスギ在来品種がありますが,それらの枝葉に赤枯病菌の胞子をつけ,人工的に病気を起こす実験から,品種別に病気へのかかり易さに強弱があるのが分かりました(図2)。ハアラなど病気に強いものでは病斑の数が少なく,できてもほとんど広がりません。ところが,ヤマダグロなど病気に弱いものではたくさんの病斑ができ,枝葉は枯れてしまいます。品種により何故このような差があるのか,はっきりしたことはまだ分かりません。

図2 スギ品種による赤枯病へのかかり易さの違い

抵抗性品種の利用  

 赤枯病に強い品種を使ってスギ苗を育成すれば赤枯病や溝腐れ病の被害を回避し,防除コストを下げられます。また,赤枯病に弱い品種を避けることは,伝染源を断って病気をなくすことにつながります。九州はさしスギ育苗が盛んなところですので,赤枯病以外の病害にも強い品種を選んで植栽することは,難しいことではないと考えられます。

枝打ちによるヒノキカワモグリガの防除


木材の価値を落とすやっかいな虫
 ヒノキカワモグリガ(右上写真)は体長1cm弱の小さな蛾です。この蛾は北海道から九州まで広く分布していますが,スギやヒノキの材木の中に点々と小さなシミを作る害虫で,九州では特にスギで被害が多いことが間題になっています。この蛾の幼虫は,小さい頃は木の枝の部分で生活していますが,大きくなると木の幹の内樹皮を食べるようになります。幹の形成層が幼虫に食べられるとその周辺の材は黒く変色してシミになり,幹の表面にはコブができます(右下写真)。このようにシミやコブができた材木は,低品質材として扱われて価格が安くなってしまうので,良質材を作ろうという林業の立場から見ると”やっかい者”なのです。

写真上 ヒノキカワモグリガの成虫 下 同幼虫による材内被害部

薬剤に頼らない防除法  

 さて,このやっかい者の被害を防ぐにはどうしたらよいでしょう。  殺虫剤はこれまでの害虫防除の主役であり,”殺虫剤をまけぱ害虫の被害を簡単に防げる”と思われがちですが,周囲から次々に侵入してくるこの虫のような場合には一部の地域だけで殺虫剤の散布を行っても防除効果があまり期待できないことがあります。かといって広域の散布は困難です。また,殺虫剤の種類によっては害虫だけではなくその天敵を殺して,かえって害虫が増えるということもあります。そこで,薬に頼らなくても害虫の被害が抑えられる森林を作るための保育管理作業について検討することにしました。

枝打ちで虫の被害を減らす  
 枝打ちは,節が小さくかつ数も少ない良質材を生産するために,樹冠の下部にある枝を切り落とす通常の保育作業です。ヒノキカワモグリガの幼虫がまだ枝にいるうちに枝打ちをすれば,この虫が幹に侵入する前に駆除でき,シミやコブといった被害を滅らせることが分かりました(図3)。図3 枝打ち量と食痕数/樹の関係

また,ヒノキカワモグリガの幼虫は冬になると幹に移動してくるという生態調査の結果からいえば,枝打ちの時期としては秋がよいのですが,これと,良質材を生産するための技打ちは夏季を避けるべきこととも一致しており,保育を兼ねた被害防除が可能なことが分かりました。
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