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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.41
1995.10.31

栽培きのこの病害を防ぐ


 動植物が病気にかかるように,きのこを栽培するときにも病気が発生します。その原因は主に細菌や,きのこと同じ仲間の糸状菌(カビ)ですが,ウィルスや線虫の場合もあります。栽培きのこのヒラタケがかかる病気に,腐敗して悪臭を放つ黄褐色変色病があります(図1)。  これにかかるとヒラタケの商品価値がなくなり,栽培者は大きな損害を受けます。この病気を予防するためには,まず病気の性質を知る必要があります。そこで,菌を分離して調べてみました。

1.病原菌:黄褐色変色病の病原菌はPAFと いう特殊な培地上で蛍光性のコロニーを作る(図2)ため,この性質を利用 して純粋に分離しました。この菌は,特異な分泌物を利用するホワイトライン 法という手法を使い,シュードモナス=トラシー(Pseudomonas tolaasii)と いうバクテリアであることを確かめました(図3)。

図1 ヒラタケの黄褐色変色病

図1.ヒラタケの黄褐色変色病

図2 PAF培地上で細菌群を分離

図2.PAF培地上で細菌群を分離


図3 ホワイトライン法により病原菌名を確認


図3.ホワイトライン法により病原菌名を確認

 
2.抵抗力:この病原菌は殺菌処理(右表のUV,H,高温)により,通常の液体培地ではほとんど死滅しますが,ヒラタケの傘の上では,この処理に強く抵抗して生き残っていました(表)。同じ現象は,低温やエタノールに対しても起こりました。

表  黄褐色変色病菌の殺菌処理に対する生存率(%)

表1 黄褐色変色病菌の殺菌処理に対する生存率
3.毒素の生産:ヒラタケ子実体の水抽出物を培地に加えて培養培地に加えて培養すると,この黄褐色変色病菌は,ヒラタケを腐敗させる毒素(Tox1〜4)の生産を増やします。特にTox2の生産量は20倍以上に増えました(図4)。

図4 ヒラタケ水抽出物の添加による毒素生産の誘導倍率
図4.ヒラタケ水抽出物の添加による
毒素生産の誘導倍率(倍)
(対照:コハク酸最少培地での培養)

    
4.病徴の再現:この特異な毒素4種を正常なヒラタケ子実体に接種すると,病原菌がなくても,いずれも図1のような特徴的な病徴が現れました。

5.まとめ:黄褐色変色病菌(Pseudomonas tolaasii)は宿主であるヒラタケからある種のシグナルを受け,ヒラタケを認識して増殖します。ヒラタケ上では,殺菌処理に対して極めて抵抗力が強い上に,ヒラタケを腐敗させる毒素を大量に生産しています。現在,この病原性の分子レベルでの発現機構の究明を急ぎ,その抑制方法の開発を試みています。



病気に強いきのこ作り

=シイタケの耐病性検定法=


1.シイタケの天敵,トリコデルマ菌:
 シイタケを栽培するときに大きな被害を起こす病原菌の一つに,トリコデルマ菌があります。この菌は糸状菌で,シイタケのほだ木や菌床に感染して高湿度条件で発芽増殖し,シイタケ菌を死滅させてしまいます。栽培者にとっては恐ろしい菌です(図1)。

図1 トリコデルマ菌に感染したシイタケ菌床

図1.トリコデルマ菌に感染したシイタケ菌床

 右の菌床の下側2/3が感染

   2.どうやって防ぐの?:
 この病気を避けるには,間接的な方法ですが,原木栽培では,ほだ木を高温多湿環境に置かないこと,菌床栽培では,培地に胞子が進入しないように栽培施設の清浄度を上げることが重要です。一定の方法で殺菌剤を使用する方法が許可されていますが,最も安全で確実なのは,病気に強いシイタケの品種を作ることです。

3.強いきのこを作るには:
 新しい品種を作る方法はいくつかありますが,ただやみくもに作っただけではそれが病気に強いかどうか(耐病性)は分かりません。そこで,その品種の耐病性を見分ける方法(検定法)が必要となってきます。

4.検定法の一例:
 まず,シイタケ菌を適当な菌床に蔓延させます。次に,菌床表面のシイタケ菌糸を削り取り,露出した面にトリコデルマ菌の胞子を接種します。しばらく培養し,シイタケ菌が,どの程度その表面を覆っているかを観察します(図2)。シイタケ菌が覆っている割合が高ければ,その品種(図3の1,2など)はトリコデルマ菌に強いわけです。

図2 検定中の15個の菌床

図2.検定中の15個の菌床

 下方の白い菌床はシイタケの菌糸がよく蔓延している。


図3 シイタケの耐病性検定

図3.シイタケの耐病性検定

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