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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.45
1996.03.15

木材の「すきま」を見る


 樹木が生きていくためには,根から葉へと樹液を運ぶためのパイプがあります。このパイプは,木材を利用するときに大変重要な役割を果たします。例えば,木材が乾燥するときや防腐処理・パルプ化処理をするときの薬液の浸透には,これらのパイプやパイプ間の隙間がなくてはなりません。しかし,意外にもその詳細は分かっていません。ここでは,「すきま」を直接目で見る方法を考案し,木材中での様々な気体・液体の通路を確実に検証する研究の一端を紹介します。

1.木材の「すきま」を目でみる方法とは
 木材中の空隙にポリエチレン樹脂を注入して木材実質部分を取り除くと,構成細胞の配置を損なうことなく,樹脂の鋳型を作ることができます。この鋳型を走査型電子顕微鏡で観察することによって,様々な「すきま」を立体的に検証することができるわけです。

1-1 道管相互間の連絡を見る

写真1

写真1:広葉樹材では,口径が大きく軸方向に1〜数mにも延びる道管が重要なパイプです。樹脂鋳型で見るサワグルミの道管は,短い距離では顕著なネットワークを構築することなく,個々の道管は,ほぼ垂直に延びていて,部分的に複合していることが分かります。

写真2

写真2:複合部分では,隣接する道管が相互に密着して横方向へもパイプが存在していると推察されます。

1-2 仮道管相互間の連絡を見る

写真3

写真3:針葉樹材でのパイプは仮道管で,壁孔によって相互に連絡されています。スギ心材の壁孔を樹脂鋳型で見ると,閉鎖の状態をはっきりと見ることができます。

1-3 レーザーインサイジングを見る

写真4

写真4:レーザーインサイジングは,防腐剤による処理性を高めるための最新の技術です。レーザーで開けた孔の樹脂鋳型を見ると,木材の縦断面に開けたレーザーの孔から細胞内腔へと,直角方向に薬剤が注入できることが分かります。


電気を使って木材の「すきま」を評価する

 木材中の気体・液体の通導性を評価することは様々な木材加工・処理を効率化し,生産された製品の品質を保証するために大事なことです。今まで,木材の通導性を評価するには,実際に気体・液体を通す方法が用いられてきました。しかし,それらの方法は測定に時間と手間を必要とし,また現場での原木の評価や工場での工程管理などには使えません。そこで,電気を使った従来にない省力・簡易型の通導性評価法の研究を進めています。

1.電気を使う方法とは
 樹木は木部中に様々なイオンを含んでいます。生材状態の木材に電圧を与えると,イオンは細胞内腔内の水中を移動しますが,その移動距離は内腔間の連絡のあるなしによって変わります(図1)。
 生材に電圧を与えながらその極性を反転するとき,反転したあとの電流の時間経過に,図2のようにピークが生じます。この電流のピーク位置までの時間経過はイオンの移動距離に比例して変化することが分かりました。つまり,ピークの位置を知ることによってイオンの動いた距離が分かることになり,ひいては材内での通導のしやすさを判定できるわけです。

図1材内の通導の難・易とイオンの移動距離との関係

図1. 材内の通導の難・易とイオンの移動距離との関係

図2 電流の時間経過とイオンの移動距離との関係

図2. 電流の時間経過とイオンの移動距離との関係
注:図中の数字が移動距離,矢印がピーク位置を示す。

1-1 壁孔での通導を評価する
 針葉樹材中の壁孔閉鎖は,通導性を決める大きな要因です。生材の辺材部では壁孔が開いていますが,心材化や乾燥によって大部分が閉じます。図3は,壁孔が閉じることによって電流のピーク位置までの時間経過が短くなり,イオンの移動距離が短くなること,つまり通導性が悪くなることを示しています。

図3 スギにおける壁孔閉鎖の有無と電流ピーク位置との関係

図3. スギにおける壁孔閉鎖の有無と電流ピーク位置との関係

1-2 通導性の改善を評価する
 スギ心材に煮沸処理や水蒸気爆砕処理を施すと,気体や液体の通りがよくなります。図4は,煮沸処理によって,電流のピーク位置までの時間経過が長くなり,イオンの動いた範囲が広がったこと,つまり通導性が改善されたことを表しています。

図4 スギ心材部の煮沸処理による電流ピークの移動

図4. スギ心材部の煮沸処理による電流ピークの移動

2.通導性評価法としての電流法の利点は

 電流測定の精度や,対象の形状,木材の密度,前処理の必要性などの様々な測定条件の制約がありません。しかも測定時間が短いので,林内から工場での測定まで様々な場面への応用が期待できます。
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