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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.46
1996.04.25

収穫試験地による森林長期モニタリング

-収穫試験地の時系列データの収集と整備 -

 樹木は成長期間が数十年から数百年に及ぶため,樹木の集団 である森林を対象とする林業では,苗木を植えてから何年たったらどれだけ の大きさ(直径・樹高・ヘクタール当たり材積)になるかを知ることが,最 も基本となります。
 森林の成長は,樹種によって違うのはもちろん,同じ樹種でも地域や地力 の良否,植栽密度,間伐の回数・強度や方法(小さい木を間伐するか,大き な木を伐採するかといった)の違いなどにより異なります。こういった複雑 な森林の成長経過を解明し,実用に役立てるため,古くから森林の成長をま とめた収穫表の作成や,森林の成長法則の研究が行われてきました。そのた めには基礎となるデータが必要です。いろいろな立地・施業条件の場所に, できるだけ多数の半永久的に固定した試験地(プロット)を設け,同じ方法 ・基準で何十年も測り続けることが,最も良質な基礎データを提供します。
 国有林では,最も古くは1914年に固定試験地を設定し,主要林業樹種の 成長量と収穫量に関するデータの収集が開始されました。それらはその後 『収穫試験地』として,営林局・森林総合研究所によって測定が継続され てきました。
 試験地では,数十年にわたる立木の成長データが蓄積されているほか, 簡単な環境条件や,施業履歴も調べられています。そのため,現在一部の 試験地が酸性雨モニタリングステーションとして活用されているなど,地 球環境のモニタリングや,林業の施業や経済性の研究のためにも今後ます ます価値が高くなると考えられます。

 日本地図に示した樹木のマークは,全国の収穫試験地の 分布を表しています。その数は森林総合研究所の本支所別に下の表のよ うであり,全国で221か所あります。

図 森林長期モニタリングシステム−収穫試験地の時系列データの収集と整備−

データ表

                                    

 全国 221か所の収穫試験地では,試験区内の直径7cm以上の 立木すべてに番号を付け,ほぼ5年おき(一部では10年おき)に,立木の1 本1本の直径,樹高,幹級,枝下高などの測定を行っています。また,標高 や斜面の傾斜など地形条件や,施業履歴が調べられているほか,試験地を設 定した時に簡単な土壌・植生調査も行われています。
 戦後の新整備計画に基づいて増設された収穫試験地が,測定開始後30年を 経過したのを契機として,調査を担当している森林総合研究所の林業経営分 野の本支所関係研究室が協力して,全国の代表的な収穫試験地21か所の成長 経過を分かりやすいパンフレットとしてまとめました。以下に収穫試験地デ ータの例として,パンフレットの内容の一部を紹介します。

東京営林局(本所) 大代ヒノキ人工林収穫試験地

 1世紀を越える森林の成長を継続調査して収穫表としてまと めることは,おじいさんが植え,息子や孫が育て・測り続け,孫か曾孫がや っととりまとめる機会を得る息の長い仕事になります。コンピュータによる シミュレーションで成長予測を行うにしても,それを検証するデータがなけ れば信頼性のある成果は得られません。ここでその一端を紹介した収穫試験 地のデータは,日本における森林の長期モニタリングデータとして,森林の 成長や環境モニタリングの研究や事業のために,ますますその価値が高くな るものです。これらのデータや表,図の1本の線も,古くは1910年代から始 まった試験地の設定・調査・データ整理にかかわった営林局・署・旧林業試 験場の方々をはじめ,大変多くの方々のご尽力なしには得られませんでした。 担当者の方々に深い敬意を表する次第です。
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