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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.55
1997.03.21

―木材と快適性―


イラスト:木材と快適性

 森林や木材は,森林浴の場や木造家屋などとして利用され,快適性や健康の増進に役立ってきましたが,その利用は経験によるところが多いのが現状です。今,科学的データによる実証がなされつつあります。        

快適性の測り方  
 快適性実験は,温度・湿度・光条件・音・風速等の環境因子を制御した人工気候室内実験(写真1)と,森林浴に代表されるフィールド実験に分けられます。
 データ測定は,生理応答指標と主観評価指標の両者の組み合わせによります。  
 生理応答評価においては,・自律神経系(血圧・脈 拍の変動並びに周波数解析,瞳孔対光反射等,・中枢 神経系(脳波等),・内分泌系(ストレスホルモン等)の指標がよく用いられます。また,主観評価としては, 「印象」を調べる代表的な方法であるSD法による官能評価や,感情プロフィール検査等の各種の質問紙が使われています。                      

写真1 実験風景の一例

           写真1. 実験風景の一例
            

木の香りの快適感を瞳孔を使って測る  

 木材から抽出した精油に一般的に最も多く含まれるのが,α-ピネンです。これを吸入すると,瞳孔対光反射において,交感神経活動を抑制し,緊張感を抑えることが分かりました。また,自然で快適であると主観的に感じられた木の香りは,瞳孔径を小さくし,リラ ックスした状態をもたしました。                               


写真2 瞳孔測定の実験風景

     写真2. 瞳孔測定の実験風景
     

木の手触りを脳波を使って評価する  

 綿や金属等の日常的に触れる可能性のある15種類の材料を集め,木材の手触り感を脳波から調べました。木材は,その上に手を置いたのみの場合,脳の活動は少ないのですが,積極的に撫でた場合,他の材料に比べて脳がよく活動していることが分かりました。つまり,木材は人にやさしい材料であるとともに,興味深く感じられていることが中枢の機能からも明らかにされました。

図 右手で木を触った時の左半球体性感覚野の活動

       図 右手で木を触った時の左半球体性感覚野の活動          

森林浴の効用をストレスホルモンで評価する  

 屋久島において森林浴実験を行いました。主観評価では,緊張・ 怒り・混乱・抑鬱の感情尺度が抑制され,活気が増進していました。 生理面では,コルチゾールというストレスホルモンの濃度が減少し ていることが分かりました。  
 以上のように,経験的に知られていた森林や木材の効用が生理・ 心理の両面から明らかにされつつあります。500万年にわたるヒトと自然のかかわりから見ても,木材が快適感をもたらすのは当然のことといえましょう。今後,ますます科学的データが蓄積され,木材が持つ快適感が明らかにされていくものと思われます。  

写真3 屋久島における森林浴実験
写真3. 屋久島における森林浴実験

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