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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.60
1997.08.20

森林管理の新たな担い手,第三セクター



豊かな自然と文化を育ててきた農山村地域
 中山間地域,いわゆる農山村地域は日本の国土の約7割を占め,さらにそのうちの8割は森林で占められています。かつてはここには多くの人が住み,食料や木材の提供などの役割を果たしてきたばかりでなく,豊かな自然と風土,伝統的な文化も育んできました。
 しかし,過疎化の進行によって中山間地域に住んでいる人の数は現在では日本の全人口のわずか15%にまで減少しています。この地域の農林業生産や自然,伝統的な文化はそこに住む人々によって守られてきたものであり,人口の減少は,こうした価値あるものが次世代に引き継ぐことができなくなってきていることを意味します。
 そればかりでなく十分な森林の管理ができないために,国土保全機能や水源かん養機能など,都市住民も含めたすべての国民が安心して暮らせるための森林の重要な機能が十分発揮できなくなっています。

森を守る人が足りない!
 森林で働く人の数は年々減少し,また現在働いている人もだんだん高齢化してきています。国勢調査によると1960年には約44万人いましたが,1990年にはわずか約11万人にまで減少しました。そして同時に,高齢化も進んでいます。1960年には40歳未満の人が半分以上を占めており,50歳以上の人が約4分の1でしたが1990年には40歳未満の人がわずか14%で,一方,50歳以上の人が68%となりました(図1参照)。

図1 年齢別の林業就業者数の推移 
図1. 年齢別の林業就業者数の推移

第三セクターで若い労働者を確保

 こうした現状を食い止めるために,地方自治体で様々な工夫をして森林で働く若い人を確保しようとしています。今最も注目されている方法は「第三セクター」と呼ばれるもので,森林組合などの民間事業体と地方自治体とが共同出資して設立し,森林の仕事を請け負う組織のことをいいます。これは1990年代に入って西日本を中心に相次いで設立され,林野庁の調べでは,現在,全国で19組織設立されています(図2参照)。
図2 林業関係第三セクターの設立位置図

図2. 林業関係第三セクターの設立位置図
 ここでは,月給制の導入,各種保険への加入,週休2日制・有給休暇の整備,高性能林業機械の導入など,若い人が働きやすい環境が整えられており,地元ばかりでなく,都市出身の若い人も就職するようになりました。彼らの動機は様々ですが,自然の中で仕事ができ,森林を守るという生きがいのある仕事として魅力を感じているようです。
 こうして第三セクターでは中山間地域の若い人々の雇用の場を提供し,さらに森林を管理することによって国土の保全にも大いに役立っています(写真1,2,3参照)。

写真1写真1
写真2写真2
写真3写真3

研究面でも第三セクターの支援を
 国も山村振興法等によって税制上の優遇措置を講じたりして,こうした取り組みを支援しようとしています。しかし,最大の問題はもともと収益の少ない林業という産業で労働者の待遇改善を図っているため,経営的に苦しく独り立ちできないところが多いという点です。
 林業経営部では第三セクター方式による組織を森林・土地管理の新しい担い手と位置づけ,文献や事例の調査分析を通じて,どのようにしたら円滑な設立・運営ができるかを解明しようとしています。そうすることによって,今後第三セクターの設立を検討している自治体や,すでに設立している第三セクターに対して有益な資料を提供していきたいと考えています。
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