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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.61
1997.09.25

世界の森林を空から測る:リモートセンシング


地球観測衛星や航空機など,空から地表や大気の状態を観測する
技術をリモートセンシング(遠隔探査)と呼んでいます

 ライト兄弟によって初めて航空機が誕生したのは今世紀のはじめの1903年ですが,その後の進歩は目覚ましく,1960年には気象衛星(タイロス)が使われるようになりました。そして,今からちょうど25年前に地球資源観測衛星ランドサットの1号機が打ち上げられました。
 空から測るこれらの技術を使って,森林地帯の様子を観測する研究が行われています。

どのような人工衛星があるのでしょう
 新聞・テレビでおなじみなのは,赤道上に静止している気象衛星ひまわりでしょう。また,地表の緑の様子も観測できる気象衛星に,ノア衛星があります。さらに数10mごとに地表の様子をとらえるために次のような特徴を持った資源観測衛星があります。

・ランドサット衛星(米国):鉱物資源発見や森林,農作物の生育状況の把握など多目的に利用されていますが,森林分野では最もポピュラーなものです。

写真:ランドサット衛星
・スポット衛星(フランス):地上をさらに詳細に見て,立体観測によって山の高さなどを計測し,地形図を作ることができるように設計されています。

写真:スポット衛星
・ふよう衛星(日本):雲や雨を透過して地表が観測できるような,レーダ観測装置(SAR)を搭載しています。

写真:ふよう衛星
・アデオス衛星(日本):広い範囲を観測できる装置や,範囲は狭いが詳細な観測ができる装置,オゾン層,大気,風などを計測できる装置など,多国籍の多種類の観測装置を搭載していました。

写真:アデオス衛星
「目で見えない光」で何が見える
 リモートセンシングでは,人間の目で見えない「光」の範囲までその反射と放射の強さを観測しています。地表のものを識別できるのは,「物体はそれぞれ固有の反射特性を持っている」という特徴に基づいています。特に,植物のクロロフィルや水分状態の観測に適した近赤外域や,中間赤外域の反射の様子を観測できるので,植生の状態をより定量的に評価することが可能になるのです。

図 水分ストレスのある葉と健全な葉の反射スペクトル特性
図. 水分ストレスのある葉(水分不足)と健全な葉の反射スペクトル特性


利用例1:広域の森林分布
 ノア衛星(地上分解能1km)のデータを使うことで,広い範囲の森林の様子を観測することができます。左の図は1年間分の衛星データを使って,タイ全域を一つの画像にしたものです。森林被覆(黒い部分)が約25%にまで落ちている様子が分かります。特に,中央から東北部にかけて森林がほとんど見られません。

写真:タイ全域の森林分布

利用例2:水分環境への植生の応答
 同じ所を1年間に20回ほど観測できるランドサット衛星などを利用して,降雨などの周辺環境の変動に対する植生の応答を観測できます。
 下の図は,タイ西部の4か月にわたる乾季の衛星データを使って,季節変化の程度の地域的な特性をとらえたものです。日本と違って,植生の生育が水の供給に左右されるために,低地ほど季節変化が大きく,乾季が来るとすぐに紅葉したり,葉を落とす様子が観測できます。これは,各地点の水分環境の変化を反映しているといえるので,森林を再生させる造林計画の策定などに必要な,立地環境情報としても利用できます。

水分環境区分図:水分環境の変化の大小を示す
水分環境区分図:水分環境の変化の大小を示す


利用例3:森林の被覆度と混交率
 乾季に連続して観測されたランドサット衛星のデータを利用して,森林の被覆度や,常緑樹と落葉樹の混交割合を推定することができます。
 右の図は,タイ北部のチェンマイ周辺の様子です。常緑樹は山の上の方(標高800m以上)に発達しているのが分かります。
 また,ここでは水分環境がよいために焼き畑が行われており,森林の被覆度と混交率が変わっている所が点々と見られます。
 このように,森林被覆の観測から山岳民の生活の様子がうかがえます。

常緑樹と落葉樹の混交配合
常緑樹と落葉樹の混交割合

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