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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.72
1999.02.19

健康住宅のための木質建材とは

−低ホルムアルデヒド合板の開発と安全性の評価−

シックハウスとホルムアルデヒド

 最近の住宅は,省エネルギー・断熱性の向上を目的として,高気密化されています。また,昔は天然素材が使われていたところに,いろいろなプラスチックや接着剤,塗料などの化学製品が使われています。その結果,室内には化学物質が充満して,住んでいる人の健康を損なう家(シックハウス)がでてきて社会問題となっています。室内の空気を汚す化学物質としてはいろいろな種類のものが疑われていますが(図1),特に合板から出てくるホルムアルデヒドが最も注目されてきました。

図1. 室内空気汚染源と疑われている建材と化学物質(PDFファイルです)

ホルムアルデヒドの室内濃度指針値

 平成9年6月に,厚生省の委員会により,我が国で初めて,化学物質の室内濃度指針値が提案されました(表1)。化学物質としてはホルムアルデヒドだけが対象となり,その値は0.1mg/m3(約0.08ppm)です。この値はWHO(世界保健機構)と同じものです。

 そのとき,トルエンやキシレンなどの総称であるTVOC(総揮発性有機化合物)についても検討されましたが,「今後の実態調査や国際的な動向を参考にして,室内濃度のガイドライン値の設定ををしていくことが適当である」として,室内濃度指針値の提案は見送られました。

表1. WHOと我が国における室内濃度指針(PDFファイルです)

合板のJAS規格とホルムアルデヒド

 厚生省がホルムアルデヒドの室内濃度指針値を提案するずっと前(昭和55年)から,合板のJAS規格の中にはホルムアルデヒド放散量に関する規定がありました。合板のJAS規格の測定方法は,ガラス容器(デシケータ)の中に合板と蒸留水を入れて24時間放置した後,水に吸収されるホルムアルデヒドの水中濃度を測定するものです(図2)。ホルムアルデヒド放散量が少ないものから順にF1,F2,F3と呼ばれています。最も少ないF1の放散量は0.5mg/l以下です。この数値(水中濃度)は厚生省の指針値(室内濃度)とは単位が全く異なりますが,森林総合研究所では水中濃度と室内濃度との関係を結びつける換算式を開発しています(平成2年)。

図2. デシケータ法(PDFファイルです)

低ホルムアルデヒド合板の開発と安全性評価

 最近開発されたホルムアルデヒドを含まない接着剤またはホルムアルデヒド含有量の少ない接着剤(フェノール接着剤とF1用ユリア接着剤)を用いて合板を製造し,JAS規格に従ってホルムアルデヒド放散量を測定しました(図3)。

図3.低ホルムアルデヒド合板のホルムアルデヒド放散量(製造直後)(PDFファイルです)

その結果,以下のことが分かりました。

1. 天然の木材からもホルムアルデヒドは放散します。

2. ホルムアルデヒドを含まない接着剤による新しい合板の放散量は天然の木材とほぼ同じです。

3. フェノール接着剤による合板はF1にほぼ合格します。

 F1用ユリア接着剤による合板については,広葉樹(メランチ)はF1に合格しますが,その他の針葉樹ではF1の基準値(0.5mg/l)を超えてしまいます。しかし,F1の基準値を超えた合板についても時間の経過とともに放散量が減少し,3週間後には厚生省の指針値をほぼ満足できることが分かりました(表2)。従って,合板のJAS規格におけるホルムアルデヒド放散量が1.5mg/l程度以下の低ホルムアルデヒド合板は,3週間後には下地用としてはもちろん,内装材として用いても厚生省の室内濃度指針値をほぼ満足できることが分かりました。室内濃度指針値があるのはホルムアルデヒドだけなので,このように安全性について明確にできる材料は他にはあまりありません。

表2. F1用ユリア接着剤による合板を内装材としたときの室内濃度予測値(PDFファイルです)

換算式:C=(0.158D+0.017)×1.09(t-23)×{(h+55)/100}×2/(1+Q/S)
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