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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.74
1999.05.28

キツツキを呼んで松枯れ防止

−アカゲラの誘致・増殖によるマツノマダラカミキリの防除−

 マツノザイセンチュウ(以下線虫)による松枯れは,平成9年度も全国で81万m3の被害がありました。東北地方では,被害が北へ拡大する傾向があり,これを阻止することが緊急の課題となっています。被害は,線虫がマツノマダラカミキリ(以下カミキリ)によって被害木から健全木へ運ばれることにより広がっていきます。
全国のマツクイムシ被害の推移

 そこで,カミキリの幼虫を好んで食べるキツツキ類を誘致し増殖することによって,松枯れ被害を軽減することを目標に取り組んできましたのでご紹介します。

アカゲラの誘致・増殖によるマツノマダラカミキリの防除

 キツツキ類のなかでもアカゲラ(全長24cm)は,カミキリの幼虫を捕食する能力が高く,アカゲラの生息密度の高い地域では,材内の幼虫の90%以上が捕食された例もあります。

 アカゲラは,おもに広葉樹類の枯木等に自ら穴を掘って巣穴とするため,ある程度太い広葉樹のある林でないと繁殖できません。また,夜間は樹洞をねぐらとしているため,安全な樹洞が多くあることが望まれます。そのため,広葉樹類や樹洞の少ない松林には,あまり多く生息していません。

 そこで,松林にアカゲラを誘致し増殖する目的で,繁殖用巣丸太とねぐら用巣箱を開発し,設置してみました。

繁殖用巣丸太

 直径20cm,長さ45cmのカンバ類の丸太を,地上3〜4mの高さで設置したところ,アカゲラが巣穴を掘り繁殖しました(写真1)。

写真1 繁殖用巣丸太に巣穴を掘るアカゲラ

写真1.繁殖用巣丸太に巣穴を掘るアカゲラ

 しかし,伐採直後の丸太の場合にはアカゲラが巣穴を掘るまでに2〜3年を要することや重量が重いことなどから,丸太の内部を中空にして設置したところ,設置後最初の繁殖期にアカゲラが繁殖に成功しました(図1)。

図1 改良中空式巣丸太(穴開け型)

図1.改良中空式巣丸太(穴開け型) 上部の穴はゴム栓でふさぐ

ねぐら用巣箱

 アカゲラは,ねぐらとしては普通の巣箱でも利用しますが,これでは他の鳥が利用したり,出入口が1か所なので天敵が侵入しても逃げられないなどの欠点があります。

 アカゲラは内壁に止まって寝るためアカゲラ専用の底のない巣箱を製作し設置したところ,早速アカゲラがねぐらとして利用しました(図2,写真2)。

写真2 ねぐら用底無型巣箱を利用するアカゲラ   図2 ねぐら用底無型巣箱で眠るアカゲラ

写真2.ねぐら用底無型巣箱を利用するアカゲラ  図2.ねぐら用底無型巣箱で眠るアカゲラ

 なお,この巣箱は実用新案として登録されています。

 秋田県の海岸クロマツ林のように,アカゲラ用の巣箱や巣丸太を設置したところ,アカゲラの観察例が多くなり,4年後にはカミキリ成虫脱出率が設置前の半分になった例もあります。しかし,カミキリ幼虫をたくさん食べるアカゲラでも食べる量には限界があります。そのため,アカゲラによる松枯れ防除は,当面,微害地での総合的防除の一環として実施することを考えています。 

 巣箱や巣丸太によるアカゲラの誘致・増殖効果は,地域や林の状況により異なると考えられますので,最適な設置方法や設置密度について,今後さらに検討を行う必要があります。また,巣丸太や巣箱に頼るだけではなく,松林やその周辺に広葉樹を育成して,キツツキ類が生息しやすいような環境にすることが大切であると思います。


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