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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.75
1999.06.25

天然林択伐による木材の生産


 北海道の森林面積5,582千ヘクタールのうち,エゾマツ,トドマツなどの針葉樹とミズナラ,シナノキなどの広葉樹が混交した天然林は3,571千ヘクタールで64%を占めていますが,そこでは主に択伐と呼ばれる抜き伐りによって木材が生産されています。今回は,現在北海道における天然林施業の主体となっている択伐について,木材生産の観点から原生林と比較し考察することにします。

択伐とは

 択伐とは,森林を一度に伐採せず,回帰年と呼ばれる期間毎に少しずつ抜き伐りし,天然更新によって次代の樹木を確保していく伐採方法のことです。樹木の成長には光が不可欠ですが,択伐によって森林内が明るくなり,稚樹や残った周囲の樹木の成長が促進されます。その意味で,木材生産のための伐採が森を育てる作業にもなっているのです。

 しかし,天然更新がいつも順調に行われるとは限りません。北海道の天然林はそのほとんどの林床にクマイザサ,チシマザサなどのササ類が繁茂し,天然更新の邪魔をしています。そのため,天然更新によって十分な後継樹が得られない場合には,ある程度人手が加えられます。ブルドーザーにレーキと呼ばれる櫛の歯のようなものを付けて走らせたり,除草剤を散布したりしてササ類を除去し,天然更新を助ける作業を行います。このほか直接苗木を天然林内に植込む方法も行われ,これらは更新補助作業と呼ばれます。

写真1 択伐林

写真1. 択伐林

 成長が衰退してきたものから伐採するため,枯死木はほとんどみられない。ただし,林床にササ類が繁茂する林分では,伐採によって林内が明るくなるためササ類の密度が増加し,天然更新は不良となる。(夕張択伐試験地)

 

原生林と択伐林の成長比較

 ここでは,木材生産の立場から,原生林(人手が加わっていない天然林)とよく管理された択伐林(択伐によって木材が生産されている天然林)とを比較してみます。図は面積が各0.5ヘクタールの隣接する原生林と択伐林における1ヘクタール当たりの蓄積の推移を40年間比較したものです。ここで,蓄積とは森林内の枝や根を含まない樹木一本一本の幹の部分の体積である材積の合計のことです。これをみると,原生林は400立方メートル前後の蓄積でほぼ横這い傾向になっています。原生林の樹木も一本一本は成長するにつれて材積は増加するのですが,一方で寿命などの理由で枯れるものがあり,それらの材積がマイナスとなって,トータルとして蓄積は横這い傾向となります。

図 蓄積の推移

 一方,択伐林はほぼ10年ごとの伐採によって蓄積が一時下がりますが,その後回復していることが分かります。択伐林では老齢の樹木から伐採し,寿命によって枯れるものはほとんどありません。そのため,各樹木の成長によって常に蓄積は上向きに推移するのです。つまり,この例のような若い木から老齢の木まで揃った択伐林では,択伐によって木材を生産しても,元の蓄積の状態に回復できるのです。ここでは,林床にササ類がほとんどなく天然更新が良好なためこのような結果となっていて,他の北海道内のササ類が密生する択伐林に必ずしもあてはまるわけではありません。しかし,天然更新がよくない択伐林においても,前に述べた更新補助作業を行って後継樹を確保すれば,この例と同様に択伐による持続的な木材生産が十分可能になると考えられます。

写真2 原生林
写真2. 原生林

 立枯木や倒木があり,倒木上には天然更新した稚樹がみられる。1mを超えるような大径木も存在するが,腐りかけているような木も混じっている。(大雪試験地)

 

 北海道内の天然林においても原生林は国立公園内など一部を除きほとんど残っておらず,貴重な自然遺産としてもうこれ以上減少させることはできません。しかし,その他の天然林においては,人間が生活していく上で木材が必要不可欠な材料である限り,択伐によって天然林を上手に育て,利用していく工夫を重ねていくことが重要です。


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