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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.77
1999.09.30

マングローブ林の動態と生産力を調べる

― 持続可能な森林管理と地球環境の保全を目指して ―

マングローブ林の現状

 「マングローブ」という用語は近年かなり一般にも浸透し,海岸防備機能や水産資源涵養機能など,その生態系が持つ特有かつ有益な機能についても,ずいぶん知られるようになってきました。しかし,一方でエビ養殖池の造成に象徴される乱開発で,急速にその面積が減少しつつあるのも事実です。東南アジアでは,すでに半分以上のマングローブ林が失われ,残された林もヤブ状の劣化した林となっているのが現状です。このような中,ポンペイ島を始めとする一部の太平洋の島々には,良好な森林環境が維持された貴重な天然林が残されています(写真1)。私たちは,その貴重な森の保全と管理のための指針作りを目指し,平成5年度より,アメリカ農務省森林局太平洋諸島林業研究所及びミクロネシア連邦ポンペイ州政府と共同で,マングローブ林の動態と生産力を明らかにするために研究を行っています。

写真1 ポンペイ島のマングローブ林

写真1. ポンペイ島のマングローブ林

Rhizophora apiculata の直径は最も高い支柱根上30cmの位置で測る

 

地上部生産力と動態を測る

 森林の生産力と動態を知るためには,固定プロットでの長期観測研究が欠かせません。ポンペイ島を始めとする島嶼マングローブ林の多くは,サンゴ礁上に成立しています(サンゴ礁型)。また,面積的には狭いものの小規模河川の河口部にも見られます(エスチュアリ型:土砂流入量が少ないために埋積の進んでいない沈水河口をエスチュアリという)。そこで私たちは,1994年1〜3月にこれらの林のそれぞれ1か所に1ha固定プロット(50m×200m)を設置し,まずは林分構造と立地環境の実態把握を試みました。

 その結果,

1)立木密度はサンゴ礁型の方が高いが,地上部バイオマスはエスチュアリ型の方が大きいこと,

2)Rhizophora apiculataは高冠水頻度域に多く出現するのに対し(サンゴ礁型の内陸側は何らかの撹乱を被っているためこの限りでない),Xylocarpus granatumは低冠水頻度域に分布し,Bruguiera gymnorrhizaSonneratia albaはプロット内では分布と冠水頻度の間に対応関係は見られないこと,

3)立木密度の高い(比較的若い林であることを意味する)サンゴ礁型にはXylocarpus granatumは見られないこと,

などが明らかになりました(図1:PDFファイル)。

図1 固定プロット内の樹種別分布と冠水頻度

図1. 固定プロット内の樹種別分布と冠水頻度

 1997年2〜3月には2度目の調査を行い,両林分とも立木密度が減少する一方で,地上部バイオマスは確実に増加しており,いずれもまだ発達段階にあることが明らかになりました。

 地上部の動態と生産力を明らかにするための調査・研究はまだ始まったばかりです。固定プロットの設置から6年目に当たる今年度は,3度目の現地調査を実施する予定です。

 

堆積構造と立地の動態を探る

 過去のマングローブ立地の動態を知ることは,将来の立地変動を予測するために必要不可欠です。そのためには,まずボーリング調査を行い,地下部の堆積構造を把握するとともに,それぞれの層位の堆積環境と堆積年代を明らかにする必要があります。

 これまでの調査・研究で,

1)サンゴ礁型マングローブ林の地下には,厚さ2m程の泥炭層が存在すること,

2)この泥炭層は,過去2000年間の緩やかな海面上昇に対し,マングローブ林が自らの立地を維持するために,その根系や落葉落枝を蓄積し地盤高を高めてきた結果,形成されたものであること,

3)エスチュアリ型マングローブ林の地下には,厚さ5mにも達する有機物層が存在すること,

などが明らかになりました(図2)。

図2 ポンペイ島マングローブ立地の典型的な堆積構造

図2. ポンペイ島マングローブ立地の典型的な堆積構造

おわりに

 これまでの研究で,マングローブ林は,地上部はもちろんのこと,地下部においても炭素固定の場としての重要な役割を担っている可能性が指摘されるようになりました。私たちは現在,地下部の炭素固定機能を評価するための調査・研究にも積極的に取り組んでいるところです。

 なお,ポンペイ島での固定プロット調査は,森林環境部,四国支所,生物機能開発部,生産技術部の関連研究室の協力の下,科学技術庁科学技術振興調整費による国際共同研究総合推進制度によって実施されているものです。

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