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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.79
1999.12.27

葉が果たす役割を調べる

−光を得るための葉の着き方と光合成によるCO2の吸収−


光環境と葉・CO2固定能力の関係

 樹木は葉による光合成でCO2を吸収し,有機物を作ります。林全体の光合成による有機物の生産の仕組みを理解することは,将来の環境変動に伴ったCO2の収支を推定する上で重要な情報になります。光合成は太陽光をエネルギー源とします。林の上に降り注いだ太陽光は,林内の葉や枝がある部分(林冠)を通過しながら,段々に弱くなり林床に届きます。よく成長した一般的なヒノキやスギの林において林外の太陽光の95%以上が林冠によって吸収されますが,林冠内の葉の着き方で光の弱まり方が異なってきます。そこで私たちはヒノキ人工林において葉の着き方を詳細に調べ,それに基づいて光合成によるCO2吸収量の推定を試みました。

 

葉の着き方・光条件・CO2吸収量を測る

 林冠の研究をするためには,葉に直接触れることができるように観測タワーを林内に建設します(写真1)。このタワーを利用して,温湿度や光などの物理環境条件・林冠の構造・葉の生理的な特性を年間通じて計測しました。その結果を以下に要約します。

写真1 林内に建設した観測用タワー

写真1. 林内に建設したタワー

 

1)葉の面積について

 単位土地面積で,その上部にある葉の総面積を除した商を葉面積指数(LAI)といいます。LAIが小さいと光合成をおこなう葉面積が減ってしまいます。逆にLAIが大きいと光合成をおこなう葉面積は増えますが,お互いの葉で陰を作りあって十分な光を確保できなくなります。実測値に基づきLAIだけを変化させてCO2吸収量をシミュレートすると,最大のCO2吸収量を示すLAIが推定できました(図1)。後述するように葉の角度も関係しますが,葉の面積と光吸収量に関する損得関係の中で,最も効率のよいLAIが存在するわけです。

図1 LAIとCO2吸収量の関係のシミュレーションの結果

図1. LAIとCO2吸収量の関係のシミュレーションの結果

LAI=4付近で,最大のCO2吸収量が得られた

2)葉の着き方の角度について

林冠上部にある葉ほど,水平面に対して急な角度(鉛直に近い)で葉が着いていることが分かりました(図2)。葉に当たる光が強くなると,より多くのCO2を吸収します。しかしあまり強い光になると,それ以上光を与えてもCO2の吸収量は大きくなりません。この最大のCO2吸収量を最大光合成速度といいます。ヒノキの場合,薄曇の日差しで最大光合成速度が得られるようです。林冠上部の葉はその角度を急にして葉面に当たる強い太陽光を和らげ,下の葉まで光を透過させます。林冠下部の葉は上部で吸収されて弱くなった太陽光をできるだけ多く吸収できるように葉を水平に着けることが分かります。

図2 高さ毎のLAIと葉の水平面に対する角度の関係

図2. 高さ毎のLAI(横棒)と葉の水平面に対する角度(○)の関係

角度は上部ほど急になり,LAIは林冠中部で大きくなる

3)光の種類について

 太陽からの光は,林冠の上部に直接ビーム状で来る光(直達光)と,大気で散乱されて天空一面から来る光(散乱光)に分けることができます。散乱光は林冠上部からさらに林冠内部に入っていきます。そこで直達光が当たる葉面と散乱光しか当たらない葉面で,それぞれのCO2吸収量を計算しました(図3)。年間を通じると,直達光と散乱光の光エネルギー量はほぼ等しいと観測されたにもかかわらず,直達光によるCO2吸収量は散乱光によるCO2吸収量の半分以下でした。つまり,快晴日が多くても光エネルギーは有効に利用されず,従ってCO2吸収量の劇的な増大は期待できません。これは前述のように最大光合成速度の存在が原因のようです。

図3 散乱光と直達光の違い(左図)と散乱光及び直達光によるCO2吸収量の季節変化(右図)

図3. 散乱光と直達光の違い(左図)と,散乱光及び直達光による

CO2吸収量の季節変化(右図)

ほぼ全ての月で直達光によるCO2吸収量は散乱光の半分以下である

まとめ

 葉の役割は光合成をおこなうことで,効率よく光合成をおこなうために,自分では使いきれない光を自分より下の葉に与えることも重要です。種によって最大光合成速度など葉の生理特性が異なります。樹木は光合成によるCO2吸収量を最大にするように葉の配置を工夫し,その結果として様々な形の木ができあがっていると考えることができます。森林では施業や自然攪乱で穴が空きます。こうした穴の周辺で光環境が大きく変わり,次世代の木々(実生)や残された樹木が大きく成長します。日本では小面積に分断化された森林が多くなっていますので,今後は林縁や穴での光環境とCO2吸収量との関係の調査研究を積極的におこなっていきます。

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