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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.81
2000.02.25

生理応答による木質居住環境評価の試み


 居住空間において,人は,様々な刺激を受けて,快・不快を感じます。この快・不快の程度を知るには,温・湿度や音圧レベルなどの「物理量」で表す方法,あるいは人が言葉や数字で答える「主観評価法」などの方法があります。さらに,身体の反応である「生理応答」が測定できれば,不快感や快適感がより科学的・客観的に評価できます。ここでは,木質居住環境を評価するために,最近行なった生理応答実験の成果の一部を紹介します。

 

1. 床衝撃音に対する生理応答

 集合住宅などでは,上階で子供が飛び跳ねたり走り回ったり,あるいは椅子などを頻繁に引きずったりすると,下階から苦情が出ることがあります。床衝撃音の測定方法を規定したJIS(日本工業規格)では,子供の飛び跳ねる音などは“重量床衝撃音”,椅子の引きずり音などは“軽量床衝撃音”と分類しています。

 図1に示すように,2階建ての木造住宅の2階でJISの標準音源である“タッピングマシン”(写真1)あるいは“軽自動車のタイヤ”(写真2)を使って,これらの床衝撃音を発生させました。このとき,1階にいる人の血圧と末梢血流量を写真3に示すように測定し,不快感の程度をこれらの生理応答としてとらえました。

図1 測定ブロック図

写真1 タッピングマシンによる軽量床衝撃

写真2 タイヤ落下による重量床衝撃

写真3 床衝撃音に対する生理応答測定風景

写真1.タッピングマシンによる軽量床衝撃

500gの鋼鉄製ハンマーが,4cmの高さから

1秒間に10回,電動で床に落下する。

写真2.タイヤ落下による重量床衝撃

写真3.床衝撃音に対する生理応答測定風景

 図2には,結果の一例として,軽自動車のタイヤの落下によって発生させた重量床衝撃音を聞いたときの血圧と末梢血流量の変化を示しました。タイヤの落下高さは,50cm,100cm,150cmの3段階で実験しました。図中にはそのうちの50cmと150cmのデータを示してあります。タイヤを落とす位置が高く,床衝撃音が大きいと,血圧と末梢血流量は床衝撃音の発生直後で変化が大きく,また安静状態に戻るのも遅いことが分かりました。

 なお,収縮期血圧は一般には最高血圧と言われるものです。

図2 重量衝撃音に対する収縮期血圧と末梢血流量の変化 

 図2. 重量衝撃音に対する収縮期血圧と末梢血流量の変化

2. 木材との接触による生理応答

 木材に触ることによって,人は,「やさしさ」を感じるといわれています。このことを科学的に実証するため,写真4に示すように,温・湿度を一定に保った実験室の中で,ヒノキの板,絹の布,金属の板を触った時の人の脈拍数と血圧を測定しました。

写真4 各種素材に接触した時の生理応答測定風景 

写真4. 各種素材に接触した時の生理応答測定風景

 図3に示すように,金属の板に比べて,ヒノキの板や絹の布を触った直後の血圧の変化は小さく,また素材に触っている1分間の経過を見ると,脈拍数と血圧の変化は金属に比べてヒノキや絹の方が小さく,人に「やさしい」材料であることが分かりました。

図3 各種素材への接触による脈拍数と収縮期血圧の変化

図3. 各種素材への接触による脈拍数と収縮期血圧の変化

 このように,生理応答を調べることによって,木材や他材料に対する人の不快感や快適感がより科学的に評価できるようになりました。

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