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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.82
2000.03.24
 

サナギから生えるキノコ

−サナギタケ−


 みなさんはサナギタケというキノコをご存じですか? その名の通り,このキノコはチョウやガの蛹から生えてくる冬虫夏草の仲間です。この菌は餌となる蛹にとりついて殺し,その後にキノコを作ります。冬虫夏草は漢方薬として有名ですが,森林の中では,特定のガが増えすぎないための天敵としての役割も持っています。

 

サナギタケ
掘り出したサナギタケ
サナギタケ

東北のブナ林では夏の2週間だけ出現します。

掘り出したサナギタケ

キノコはガの一種(ブナアオシャチホコ)の蛹から生えています。(キノコの長さ3〜5cm)

菌と虫,出会いの場は? サナギタケについての3つの疑問

   1. 菌は普段どこにいるのでしょうか。

   2. 菌はどのように虫に侵入するのでしょうか。

   3. 菌は何日で虫に侵入し,虫は何日で死ぬのでしょうか。

これらの疑問をどのように解明すればよいでしょう。

餌となるガの一生に,疑問を解くヒントはないでしょうか

    ブナアオシャチホコは初夏に成虫になり,ブナの葉に産卵します。

    幼虫は夏に葉を食べて成長し,夏の終わりに林床の落ち葉の下にもぐって蛹になり

     冬を越します。

    (翌年の夏に,運の悪い蛹はガになれず,サナギタケが出現します。)

 

サナギタケの分類上の位置

菌界(きんかい) 子嚢菌門(しのうきんもん) 麦角菌目(ばっかくきんもく) 麦角菌科(ばっかくきんか) 冬虫夏草属(とうちゅうかそうぞく) (Cordyceps属)(こるでぃせぷす) 和名 サナギタケ 学名 Cordyceps militarisこるでぃせぷす みりたりす

 

−蛹の埋め込み実験−

 

 「えさ」を環境中に入れて特定の菌をおびき出す,釣りだし法という菌類の研究方法があります。もしもサナギタケが虫の越冬場所にいるならば,蛹を埋めて菌が釣り出せるのではないでしょうか。

そこで.....私たちは林床に蛹を埋めたり(写真左),採集した腐葉に蛹を埋めこんだりしました。

林床への蛹の埋め込み実験
「釣り出した」サナギタケ
林床への蛹の埋めこみ実験

この後,捕食者に食べられないように金網をかぶせました。

「釣り出した」サナギタケ

採集した腐葉に蛹を埋めました。

すると.....一部のサナギからキノコがにょきにょきと出現しました(写真右)。

 

わかったこと

林床の腐葉の中にサナギタケの菌が潜んでいることが分かりました(疑問1の答)。

さらに,場所によって菌の密度が違うことも分かりました。

速い場合には菌は埋め込み後約10日で蛹に侵入し,蛹は死ぬまでに30〜40日かかることが分かりました(疑問3の答)。

 

さらにわかったこと

蛹はえさを食べないので,菌が口から蛹の体内に入ったわけではありません。

従って,菌は蛹の皮膚を突き破って侵入したと考えられます(疑問2の答)。

 

こんな単純な実験からでも,こんなに多くのことが分かります。

 

そして,新たな疑問

今度は幼虫ではどうでしょう。葉の上で病気になることはないのでしょうか。

皆さんなら,どのように調査しますか?

 

ブナ林からはサナギタケ以外にも,ガやその他の昆虫の病原菌が見つかっており,私たちは森のしくみを明らかにするために一つひとつ実験を積み上げています。

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