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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.85
2000.06.30
 
ヤナギ畑の造成

[なぜヤナギ?]

 ヤナギは挿し木が容易で初期成長が早く,伐採後萌芽により再生する能力が優れており,数年程度の短い伐期での繰り返し生産に適しています。このような特性が着目されて,スウェーデンなど欧米諸国では、脱原子力発電のための代替エネルギー資源の一環として,ヤナギの農地への植栽が政策的に実施されています。まさに「ヤナギ畑」です。

写真1 ヤナギ畑(2年目夏)

写真1. ヤナギ畑(2年目夏)

 北海道でもヤナギは河川敷などに広く生育していますが,これまで大部分は利用されないまま放置されてきました。しかし,アウトドアブームに加えて河川水質浄化や土壌改良用の資材としての木炭需要の増大,将来のエネルギー資源などの面から,我が国でも利用の拡大が期待されています。

 ヤナギ資源を効率よく造成し利用するためには,その特性を知ることが大切です。ヤナギが天然に分布する河川敷は,栄養が上流から少しずつ供給されます。一方植栽の有力な候補地の一つである耕作放棄地は,初期の栄養条件が良好と考えられます。本研究ではこうした土壌の栄養条件の違いに着目し,肥料のやり方を変えてヤナギを育て,成長やその源になる光合成を調べました。ヤナギは雌雄異株性で,雌花と種子を生産する雌株の成長が雄株よりも劣るといわれています。そこで,雌雄の成長差も調べてみました。

 

[試験研究方法]

 材料には,ナガバヤナギ(Salix sachalinensis),エゾノキヌヤナギ(S. pet-susu),エゾノカワヤナギ(S. miyabeana)の雌雄クローンを用いました。これらのさし穂を芽吹き前の4月末に森林総合研究所北海道支所の苗畑にさし付けて育て,翌年春の芽吹き前に地際から20cmの高さで台切りし,萌芽を成長させました。施肥の条件として,栄養が少しずつ供給される河川敷を想定して有効成分がゆっくり溶け出す肥料(緩効性肥料)を与えた処理区(S区),初期の栄養条件が良好な耕作放棄地を想定して有効成分が速やかに溶け出す肥料(速効性肥料)を与えた処理区(R区),比較のために肥料を与えない処理区(対照区)を設定しました。夏季に直射光を十分受けている葉について,光合成の速度(Pn)と気孔の開き具合(気孔コンダクタンス:Gw)を測定し,秋の落葉後に掘り取って乾燥重量を測定しました。

[結果]

 成長の源となる光合成を行うためには,気孔を開いて大気中の二酸化炭素を葉の中に取り込みますが,同時に気孔を通って葉から水分が出ていってしまいます。これを蒸散と呼びます。光合成が同じでも,気孔が大きく開いていると蒸散で出ていく水の量が多くなってしまいます。光合成と蒸散の比(光合成/蒸散)は水利用効率と呼ばれ,この水利用効率が低いほど成長にはたくさんの水分が必要になります。

 光合成の速度(Pn)は,ナガバヤナギを除いて肥料を与えなかった対照区がやや高くなる傾向が見られました(図1)。しかし,気孔の開き具合(気孔コンダクタンス:Gw)とPnを調べてみると,施肥の条件によって両者の関係が異なっており,対照区,速効性の肥料を与えたR区,緩効性の肥料を与えたS区の順にGwが大きいことが分かりました(図2)。つまり,対照区では気孔を大きく開いて効率よく二酸化炭素を取り込むことで光合成を維持しているけれど,同時に蒸散により多くの水を失ってしまいます。肥料を与えてやると気孔をあまり開かないでも光合成が行えるので,必要とする水分の量は少なくてすみますが,特に河川敷を想定して緩効性肥料を与えたS区でその傾向が顕著であるといえそうです。

図1 ヤナギの光合成速度

図1. ヤナギの光合成速度(Pn)

○,●:キヌヤナギ,△,▲:ナガバヤナギ,□,■:カワヤナギ

白抜き:雄クローン,黒塗り:雌クローン
図2 気孔コンダクタンスと光合成速度の関係

図2. 気孔コンダクタンス(Gw)と光合成速度(Pn)の関係

 一方,ヤナギの収量(幹・枝の乾燥重量)は,キヌヤナギの雄クローンが他と比べて著しく多い結果となりました(図3)。また,いずれの樹種も雄クローンが雌クローンと比べて収量が多く,施肥により収量が増加し,特に緩効性肥料の効果が大きいことが分かりました。

図3 ヤナギの収量

図3. ヤナギの収量

 以上の結果,今回調べたヤナギ3種では,施肥によって水利用効率が高まること,その効果は河川敷を想定した緩効性肥料がより大きいことがわかりました。ヤナギの収量はいずれの樹種も施肥により増加しましたが,水利用効率の違いがその要因の一つと考えられます。気孔を開いて二酸化炭素を効率よく取り込み高い光合成を維持するためには,蒸散で失われる大量の水を吸水する必要があります。尾根筋のような土壌の養分と水分が不足しがちな立地では,緩効性肥料の施肥により水利用効率を高めることで,収量の増大が期待できます。また,ある程度湿潤な環境ではエゾノキヌヤナギ雄クローンの生産力が高く,植栽候補として推奨できそうです。


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