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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.89
2000.11.30

荒廃熱帯森林生態系の修復

―持続的な森林管理の一翼を担う―

熱帯林では何が起きているのでしょうか?

 毎年,世界で1,000〜1,500万haの熱帯林が消失し,さらに510万haの森林が伐採され,二次林化しています。さらに,600万haの農耕地が表層土の侵食などにより荒廃地化しています。森林や農地が荒廃したこれらの地域では生物多様性の低下,バイオマス(生物体量)の減少,地力の低下がひどく,自然生態系が急激に荒廃しているのが現状です。自然資源を持続的に利用するためには,拡大しつつある荒廃地を森林に修復することが人間をはじめそこにすむ生物にとって急務の課題です(図1)。二次林とは二次遷移上の森林を指し,灌木林からもとの天然林へ向かうようなものまで様々です。

図1 荒廃した自然生態系の修復

図1. 荒廃した自然生態系の修復

どのようにして解決できるでしょうか?

 荒廃した熱帯森林生態系の修復は,利用可能な森林を拡大することにつながり,持続的森林資源の管理の一翼を担います。このため荒廃した熱帯森林生態系を修復することを研究の目的とし,三つの研究活動を行いました。(1)森林伐採の森林生態系への影響評価と伐採インパクトの軽減,(2)伐採跡地や二次林の修復技術の開発,(3)荒廃地における造林技術の開発と人工造林地の地力を維持して林地を利用する持続的立地管理です(図2)。

 研究活動を行なう際には,まず技術的課題として伐採インパクトの軽減,天然更新,植栽樹種選択と適地判定,森林の利用価値を高めるエンリッチメント植栽,2樹種以上を混ぜた混植,樹木を植えることによって他の樹種が侵入しやすくなるような植栽の触媒効果,持続的立地管理と森林管理などに研究の焦点をおきます。また,社会経済的側面も目的達成のために重要な項目で,生産林と環境林,地域住民参加,社会経済的容認といった点を研究に組み込んでおく必要があります。

図2 持続的な森林管理のための荒廃した熱帯森林生態系の修復

図2. 持続的な森林管理のための荒廃した熱帯森林生態系の修復

劣化した熱帯林の修復は可能でしょうか?

 (1)については,インドネシア熱帯雨林とアルゼンティン亜熱帯雲霧林でRIL(Reducing Impacts Logging)の導入による伐採強度の軽減により,森林生態系の変化を明らかにしました。

 (2)では,ペルーアマゾンのプルマス,マレーシアとパプアニューギニアの熱帯雨林伐採跡地で混植によるエンリッチメント植栽を行い,熱帯林再生と資源価値の向上を目指しました。マレーシアでは,ギャップ(孔状)植栽とライン(列状)植栽を行いました(図3)。植栽した場所でのバイオマスや植物種の多様性は一年後には全ての処理区で高くなりました(図4)。現在は,継続モニタリング中で,コスト―ベネフィット(投資効果)の点から評価を行いつつあります。

図3 マレーシア・パソにおけるギャップ植栽やライン植栽などのエンリッチメント植栽

図3 マレーシア・パソにおけるギャップ植栽やライン植栽などのエンリッチメント植栽

T1: ライン植栽(幅2m,5m,10m),T2: ギャップ植栽(10mx10mx5個),T3: ギャップ植栽(20mx20mx5個),T4: ギャップ植栽(10mx10mx9個)

図4 マレーシアにおける異なったエンリッチメント植栽下での出現種数の変化

図4. マレーシアにおける異なったエンリッチメント植栽下での出現種数の変化(1998〜1999)

 (3)では生産力維持のため,タイのチーク人工林への間伐及びインタークロッピング(木場作),萌芽と残存木による複層林化など,ブラジルのユーカリ林における伐採時の枝条用いた持続的な立地管理法を導入し,人工造林における伐採ローテーションの問題を検討しています。

 これらの研究を通して,荒廃林地を引き起こした主体(商業伐採跡地―政府・企業,短伐期林業―企業,草地・休閑地―農民など)を修復母体とすることが有効であること,地域住民の修復作業(混植,インタークロッピング,造林,保育)への参加が必須であることが分かりました。地域住民の活動を促し,多様な利益をもたらす木材生産だけでなく,高い環境機能を持つ多目的森林の修復が重要なことです。

 荒廃熱帯森林生態系の修復による森林資源の持続的利用と地球環境変化に対する環境バランスを図ることが今後必要でしょう。そのため,(1)天然更新を加速する処理方法の確立とエンリッチメント植栽技術開発,(2)荒廃地での森林の再生と熱帯人工林地での立地管理技術の確立,(3)修復技術のコスト―ベネフィットの評価と森林修復への住民参加,(4)地域に最適な森林修復管理方法の選択などを明らかにしていかなければなりません。また,気候の違う地域ではその荒廃・劣化の程度が異なり,規模と技術導入により森林の再生,修復,回復,復元,改善などが行われる必要があります。

 なお,この研究は,国際農業研究協議グループ(CGIAR)の一つである国際林業研究センター(CIFOR)へ「荒廃林地の修復」プロジェクト特定として,外務省が拠出した資金により行われたものです。また,2001年からは第2期が始まります。

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